2021 Fiscal Year Research-status Report
Bottom-Up Nanostructuring of Cellulose for Creating Functional Biomedical Materials
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21K14688
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
秦 裕樹 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 防衛医学研究センター 医療工学研究部門, 助教 (30872981)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セルロース / 自己組織化 / ナノ構造 / 医用材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、セルロース素材を部分的に加水分解することでセロオリゴ糖を生成させ、その後自己集合化させることでボトムアップ的なナノ構造化を図る。 まず、セルロース素材固有の繊維構造を維持したまま、部分的な加水分解によりセロオリゴ糖を生成する方法を検討した。種々の溶媒の中から、セルロースの加水分解触媒かつ溶媒としてはたらくリン酸に着目した。モデルセルロース素材として高純度セルロースからなるろ紙を用い、適切な濃度に希釈したリン酸で膨潤させて静置した。その結果、ろ紙がマクロな形状を維持したまま半透明となり、部分的な溶解・加水分解が進行していることが示唆された。マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析の結果、セロオリゴ糖が確かに生成されていることがわかった。 生成されたセロオリゴ糖を集合化させるため、リン酸を含んだ状態のろ紙に水を滴下した。その結果、ろ紙が不透明となったことから、自己集合化が進行して何かしらの構造体を形成していることが示唆された。集合構造を走査型電子顕微鏡で観察した。まず、低倍率観察からは、ろ紙固有のマイクロ繊維構造が概ね維持されていることがわかり、リン酸処理によるセルロースの溶解・分解は部分的であることが確認された。そのマイクロ繊維の表面を高倍率で観察した結果、無数のナノスパイク状の構造体が観察され、これは未処理ろ紙の繊維表面は滑らかであったことと大きくことなった。マイクロ繊維表面でセロオリゴ糖が不均一核生成して集合化したものと推察される。以上のように、セルロースの溶媒かつ加水分解触媒であるリン酸を適切に用いることで、セルロース素材をボトムアップ的にナノ構造化できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、セルロース素材の部分的な加水分解によりセロオリゴ糖を生成する方法を確立することに加え、令和4年度に計画していた、セロオリゴ糖の自己集合化によるナノ構造化も達成した。特筆すべきことに、計画段階では加水分解および溶解・集合化にそれぞれ異なる溶媒を用いる予定であったが、加水分解触媒かつ溶媒としてはたらくリン酸を用いることで、より少ないステップ数でナノ構造化を達成した。以上の成果からこのように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な条件でセルロースの部分溶解・加水分解ならびにセロオリゴ糖の集合化を実施することで、セルロース素材のナノ構造化のための重要なパラメータを探索する。該ナノ構造化プロセスでは膨潤したろ紙を周囲空気下で静置後に水を滴下するため、巨視的に不均一であることに注意を払いながら検討を進める。さらに高機能な衛生材料の創製を目指し、ナノ構造化したセルロース素材に銀ナノ粒子を複合化し、その抗菌作用を評価する。
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Causes of Carryover |
セロオリゴ糖の集合化のために用いる溶媒として、水酸化テトラ-n-ブチルホスホニウムなどの比較的高価な溶媒も検討する予定であったが、最初に検討した安価なリン酸で目的のナノ構造化を達成できたため、溶媒をはじめとする化学試薬類への使用が予定より少なくなった。さらに、COVID-19の影響により学会がオンライン開催となり、当初計画していた旅費の使用がなくなったため、残額が生じた。次年度、力学試験機や各種消耗品の購入に充当する予定である。
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