2021 Fiscal Year Research-status Report
カチオン染料の還元と酸化を利用したポリプロピレン繊維の染色メカニズムの解明と応用
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21K14690
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Research Institution | Toyama Industrial Technology Research and Development Center |
Principal Investigator |
吉田 巧 富山県産業技術研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (80741751)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポリプロピレン / 染色 / カチオン染料 / 紡糸 / マルチフィラメント / 示差走査熱量測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリプロピレン(PP)は汎用樹脂中、最軽量であり、耐熱性、耐薬品性などの優れた特性を持つことから広範な分野で利用されている。しかしながら、繊維用途としては染色性に乏しく、ファッション性が要求される服地には向かないという短所があった。この課題を解決すべく、著者はカチオン染料の還元と酸化作用に着眼して、これを応用した新たなPP繊維の染色方法を考案した。本研究では、PP繊維の結晶化度や延伸倍率の差異が染色性に与える影響を調査した。 溶融紡糸装置を用いて、原料樹脂ペレットから延伸倍率やフィラメント数の異なる複数水準の糸を作製した。作製した糸において、樹脂吐出量が同量(12 g/min)で、フィラメント数: 12 F、延伸倍率: 未延伸(巻取速度150 m/min)、2倍(巻取速度300 m/min)、3倍(巻取速度450 m/min)、5倍延伸(巻取速度750 m/min)のものと、フィラメント数: 48 F、延伸倍率: 未延伸、3倍、5倍延伸のものに対して、示差走査熱量測定(DSC)及び染色-測色試験を行った。DSCでは、12 F、48 Fともに延伸倍率の順に結晶化が進行していることがそれぞれのDSC曲線から確認できた。染色-測色試験では、染料としてBasic Blue 3を用いて染色し、測色計を用いて色味を測定したところ、12 F、48 Fともに延伸倍率の順に、L*が大きくなり、より淡色に染色された。また、12 Fと48 Fの染色度合を比較すると、同じ延伸倍率であっても48 Fの方がより淡色に染色されることが明らかとなった。 本研究により、本染色法では他の染色方法と同様に延伸倍率が大きくなるについて染色性が悪くなるということが明らかとなった。本研究成果は、染色生地を選定する際に有用であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究において、本染色方法における被染色繊維の影響は調査されていない。当該年度の研究では、当初の研究計画どおり、本染色方法における繊維の結晶化度や延伸倍率の影響を調査する目的で、PPペレットから延伸倍率やフィラメント数の異なる複数水準の糸を作製し、それら作製した糸に対する染色性の差異を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの染色実験は、生地重量0.5g程度のビーカースケールで実施してきた。今後は生地重量5kg程度の準量規模まで規模を拡大した染色実験を行う予定である。染色生地の選定に際しては、当該年度の研究成果を踏まえて適切な選定を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度に計上していた旅費が新型コロナウイル感染症拡大の影響で支出できなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度に実施予定の準量産試験機を使用した染色実験のための費用として使用する。
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