2021 Fiscal Year Research-status Report
What is the role of insulating polymers in conductive polymer diluted thin films?
Project/Area Number |
21K14698
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
佐藤 友哉 東京理科大学, 理工学部物理学科, 助教 (80836370)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 絶縁性高分子 / 導電性高分子 / キャリア輸送特性 / 電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、導電性高分子としてポリフルオレン(PFO)、絶縁性高分子としてポリスチレン(PS)を選択し、混合膜を形成した際のPSの影響を検討した。PFOは単純なスピンコート法により製膜するとアモルファス膜が形成されるが、製膜条件を適切に選択することで隣接するフルオレンユニット同士の平面性が向上し主鎖が伸びたβ相と呼ばれる秩序だった膜が形成されることが報告されている。また、β相が形成された場合、吸収スペクトルの長波長側で特異的な吸収ピークが観測される。本研究にて、重量平均分子量が異なる2種類のPS(Mw=4000と500)とPFOを1:1の割合で混合した薄膜の吸収スペクトルを測定したところ、重量平均分子量が小さいPSと混合した場合においてβ相由来の吸収ピークが観測された。このことから、PFO:PS混合膜におけるPFOのコンフォメーション変化にPSの重量平均分子量が影響していることがわかった。さらに、重量平均分子量が小さいPSを用いて、PSの割合を10~90%となるように調整し作製した混合膜の吸収スペクトルを測定した結果、PSの割合の増加に伴ってβ相PFO由来のピーク強度の増加が確認された。したがって、混合するPSの割合を調整することでPFOのコンフォメーションを制御可能であることが明らかとなった。また、PFO膜および混合比が1:1となる条件で作製したPFO:PS混合膜を用いて電子オンリー素子を作製し電流-電圧測定を行った。その結果、PSと混合することで電流密度がおよそ3桁向上することが確認され、β相形成と電子輸送特性との間に相関があることを示唆する結果が得られた。電子状態についてはPFOのみの場合を対象とし、アモルファス薄膜と意図的にβ相を形成させた薄膜の紫外光電子分光測定を行った結果、β相の有無による違いは見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度はPFOとPSの混合系を対象に研究を進めることで、混合するPSの重量平均分子量が混合膜中のβ相の形成に影響していること、さらに混合するPSの割合に応じて誘起されるβ相の割合が変化することが吸収スペクトルの変化から確認できた。また、PFO薄膜および1:1の混合比で製膜したPFO:PS混合膜を用いて電子オンリー素子を作製し、その電流-電圧測定からPSとの混合によるβ相形成と電子輸送特性との間に相関があることを示唆する結果が得られている。 しかしながら、電子状態の評価に関してはPFO:PS混合膜に対する光電子分光測定を試みているものの、試料帯電の影響を緩和できずPFO薄膜のみでしか実施できていない。また、混合膜の電気特性評価のための素子作製条件を最適化するのに当初の想定よりも時間を要してしまった。そのため、電流-電圧測定による評価は行えつつあるものの、2021年度の後半から計画していたCELIV測定による評価までは実施できていない。 以上のことから、当初の実施計画よりもやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、絶縁性/導電性高分子混合膜の電子状態評価ならびに電荷輸送特性の評価に取り組む。具体的には、試料を薄膜化するとともにメッシュ電極を励起光と試料の間に挿入し試料に照射される励起光の強度を緩和することで、現段階で問題となっている試料帯電の影響を緩和し、PSとの混合が電子状態にどのような影響を与えているかを光電子分光を用いて検討する。また、2021度の前半で昨年度予定していたCELIV装置の立ち上げを早々に済ませ、PFO:PS混合膜について形成されるβ相の割合と電荷移動度の相関についての評価を行う。 PFO:PS混合膜の膜構造や混合に対するPSの影響に関しては、一定の成果が得られているので、2022年度はPFOと混合する絶縁性高分子を変えた場合についての検証を行う。具体的にはPSは非晶質な高分子であるがポリエチレンなどの結晶性の高い高分子と混合した場合にPFOに対しどのような影響を与えるのかについて検証していく。
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Causes of Carryover |
ソースメジャーユニットと電気測定用のマニュアルプローバーが購入予定金額よりも安価に入手できたことと、予定していたCELIV測定の立ち上げに時間を要してしまったため、差額が生じた。繰越金は今年度予定していたCELIV装置用の微小電流増幅器の購入と測定試料や素子作製用の透明電極付き基板の購入に使用する予定である。
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