2021 Fiscal Year Research-status Report
全塗布プロセス適応化に向けた2分子膜型有機電子材料の開発
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21K14699
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
東野 寿樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (30761324)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有機トランジスタ / 有機半導体 / 拡張π電子系 / 構造異性体 / チエノアセン / 分子配向制御 / アンバイポーラ材料 / 両極性有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
全塗布プロセス適応性を備える塗布型有機半導体材料の開発を目指して,本年度は主に,塗布成膜性に優れる2分子膜構造の構築の観点から物質開発に取り組んだ.非対称パイ電子骨格をベースとした新規類縁体・構造異性体の合成に成功し,その結晶構造,薄膜トランジスタ特性を明らかにすることができた. まず,以前申請者が開発した非対称パイ骨格系材料に対して周辺物質の開発を進め,アルキル鎖長(炭素数 = 6, 10)と構造異性(syn体とanti体)による構造-物性相関を調べた.アルキル鎖長の効果は溶媒溶解性と相転移温度の変化として現れた.一方,パイ電子骨格の構造異性は構造物性に影響を与えた.syn体は2分子膜型ヘリンボーン構造を形成し,優れた層状結晶性と10 cm2/Vsを超える高移動度を維持した.一方,非対称パイ骨格の末端チオフェン環の向きを変えたanti体では,隣接分子どうしが互い違いに一部重なる反平行型ヘリンボーン構造を形成することにより,塗布成膜性およびデバイス性能が制限された.計算科学的アプローチにより,この構造異性にもとづく結晶構造転換が,分子の剛直部位の形状および疑似対称性に起因することを確認し,このような分子構造的特徴が,非対称パイ骨格を2分子膜構造に転換するための重要な指導原理になることを見いだした. その一方で,新規有機半導体の開発に着手に向けて,有望なパイ電子骨格の選定に取り組んだ.キャリア選択性が鋭敏に現れる両極性輸送材料に焦点を当て,強固なキャリア輸送に深く関連するエネルギー準位の議論に立ち戻り,その電位窓を満たしうる低分子系材料250種以上(青色色素・D-A型分子・パイ拡張型芳香族・金属錯体・中性ラジカル種・キノイド骨格・反芳香族化合物)およびD-A型共結晶30種以上について,分子設計のコンセプトで各物質を分類することでパイ電子骨格の機能性を精査した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規物質の開発に成功し,その結晶構造解析ならびに半導体特性評価により,本研究課題の鍵となる2分子膜構造の構築に関する知見を得ることができ,また,新規有機半導体開発における有望なパイ電子骨格の選定ができたから
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた成果に基づき,優れた塗布成膜性と半導体特性を兼ね備えた有機半導体材料群の物質開発をさらに展開していく.特に,2分子膜構造の構造自由度に着目して,層間方向の分子間相互作用の変調などに取り組む.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行に伴い,予定していた出張・学会の開催中止につき,旅費の使用がなかったことで次年度使用額が生じた.余剰分は,実験に必要な物品購入費および成果発表のための学会旅費に充てる.
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