2021 Fiscal Year Research-status Report
放射性核種の超長期安定固定材料:超構造を有するムラタイトの合成と構造解析
Project/Area Number |
21K14707
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
牧 涼介 岡山理科大学, 工学部, 助教 (30881693)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | セラミックス / シンロック固化 / 微構造 / 蛍石型構造 / 超格子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
多種類の放射性核種が含まれる高レベル廃棄物の安全かつ低コスト保管法の確立は日本における重要な課題となっている。シンロック固化技術は放射性廃棄物の長期保管方法の一種であり、固化体の候補の一つであるムラタイトは多くの元素を長期間安定に閉じ込めることが可能な次世代のセラミック固化体として期待されているが詳細な結晶構造は解明されていない。本研究は、ムラタイトの詳細な結晶構造を明らかにし、安定に閉じ込めることが可能な放射性核種について検討し、得られた結果を基に、多様な放射性核種を高密度に含有可能なムラタイトの合成法を開発することを目的としている。 新たにSr, CsおよびMoについて構成元素として取り込むことが可能か検討するため、種々の組成および焼成温度でムラタイトを固相反応法により合成した。得られた試料について粉末X線回折装置を用いて相同定した結果、上記の元素を含まない試料は3×3×3の三次元的な蛍石型構造 (M3超格子)を示し、Sr, CsおよびMoを含む試料は8×8×8の蛍石型構造 (M8超格子)を主相に持つM8/M3コンポジット固化体であることがわかった。M8相を内包するようにM3相が生成することから、M8相に含まれる放射性核種はマルチバリア構造による高い耐浸出性が期待される。また、焼成温度によりM8/M3比率は変化することがわかった。 M8/M3コンポジット固化体のM3結晶中にイオン半径の大きい元素(Zrなど)を豊富に含むメゾスケールの巨大周期をもつ超構造の生成が確認されている。これは、研究当初はM3およびM8相の相互成長に起因すると考えられていたが、組成の異なるムラタイトについて電子顕微鏡観察を行った結果、超構造の生成は化学組成(特にZr)に影響される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、おおむね順調に進展している。2021年度は、種々の元素を含むムラタイトを固相反応法により合成し、様々な放射性核種について構成元素として取り込むことが可能か検討した。Sr, CsおよびMoを含む試料では8×8×8の蛍石型構造 (M8超格子)を主相に持つM8/M3コンポジットが生成することが明らかとなり、これらの元素は優先的にM8相に取り込まれると考えられる。また、メゾスケール超構造の生成について検討した結果、化学組成に依存することがわかった。 以上のことから、2021年度の目的はおおむね達成できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、Sr, CsおよびMoを含むM8/M3コンポジット固化体について微構造評価を行い、化学組成および結晶構造パラメーターを詳細に検討する。また、耐浸出性評価を試み、微構造との相関性について検討する。 メゾスケール超構造の生成は化学組成に起因すると考えられるため、種々の組成でムラタイトを合成し、メゾスケール超構造の形成メカニズムの解明を図る。
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