2021 Fiscal Year Research-status Report
二次電池用亜鉛極の長寿命化を目的とした充放電反応速度論および電解液設計指針の構築
Project/Area Number |
21K14712
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
池澤 篤憲 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80824953)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 亜鉛空気二次電池 / 亜鉛極 / 電解液 / 水系二次電池 / その場測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜鉛極は安価、高容量かつ比較的低電位で不燃性のアルカリ水溶液において作動可能なため、次世代の二次電池負極として期待されている。しかし、充放電を繰り返すことで電極形状変化、不動態化が生じ容量劣化が進行するため、長寿命化が喫緊の課題となっている。亜鉛極の充放電反応は電気化学反応である亜鉛の溶解析出反応(過程1)、電解液中の亜鉛酸イオンの輸送(過程2)、化学反応である酸化亜鉛の溶解析出反応 (過程3)の3つの過程で構成される。中間生成物である亜鉛酸イオンの輸送距離が長すぎると、過程1と過程3が異なる領域で進行して形状変化 が生じ、輸送距離が短すぎると、亜鉛上に緻密な酸化亜鉛の被膜が形成され不動態化が進行することが知られている。本研究では、亜鉛酸イオン輸送距離を支配する電極反応速度論を解析することで、長寿命化のための電解液設計指針を打ち出すことを目的とする。 本年度はX線回折測定と共焦点顕微鏡測定を組み合わせたその場測定系の構築を行い、亜鉛極充放電反応に与える電気化学過程(過程1)と化学過程(過程2,3)の反応速度比の影響を調べるために、種々の充放電レートにおける充放電試験を実施した。フルセルを用いた充放電試験の結果、極めて低レートで充放電を行った際に電極寿命が極端に短くなることが明らかとなった。構築したその場測定や解体試験(X線CT、走査電子顕微鏡測定)の結果、放電時の亜鉛溶解反応(過程1)が、電解液中の亜鉛酸イオンの輸送(過程2)に対して相対的に遅くなることで、電極近傍での亜鉛酸イオンの過飽和度が下がり、酸化亜鉛の析出反応 (過程3)が抑制され、電極内の活物質が枯渇して劣化につながることが明らかとなった。 本成果は2021年10月に開催された第11回CSJ化学フェスタで研究協力者の修士課程学生が発表し、優秀ポスター発表賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していたその場測定系の構築・適用と速度論的解析が達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
電気化学過程(過程1)と化学過程(過程2,3)の反応速度比が重要な因子であることが明らかとなったため、次年度はこの結果に基づいた電解液設計指針の構築を推進する。具体的には、過程2/3を抑制/促進すると期待できる電解液を用いて、充放電試験、その場解析、解体解析を実施し、電極寿命に与える影響と速度論的な議論を実施する。
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Causes of Carryover |
当初は多チャンネル電流電圧変換装置および領域分割電極を購入する予定であったが、当該実験を回転リングディスク電極装置を使用してより効果的に実施できることが明らかとなり、差額として次年度使用額が生じた。当該の次年度使用額に関しては、その場測定を加速させるための追加セルの製作費に適用する予定である。
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