2021 Fiscal Year Research-status Report
液相複合化による全固体Li二次電池での高容量正極反応の制御
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21K14716
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
引間 和浩 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50845617)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 全固体電池 / 液相複合化 / 硫化物固体電解質 / 電気化学的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では核成長法などの液相法により正極複合体を作製し、全固体電池での高容量の発現を目指している。2021年度は導電助剤であるVGCFの添加プロセスを検討することで、微構造を制御したLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極複合体を作製して電池特性を評価した。また、液相複合化を適用できる活物質材料の多様化を見据えて、新規正極活物質の合成も行った。 前駆体溶液中で導電助剤VGCFを添加して、正極複合体(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極活物質/Li7P2S8I固体電解質/導電助剤VGCF)を作製することで、得られる放電容量が増加した。SEM観察により、VGCFがLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極活物質同士をつなぐように分布していることが確認され、電子の橋渡し効果が得られたと考えられる。VGCF添加プロセスを変えることで正極複合体の微構造制御が可能であり、電子伝導パスの確保が可能であることを明らかにした。 また、アンチペロブスカイト構造を有する(Li2Fe)SO正極活物質の全固体電池特性評価を行った。初回サイクルの放電容量は約200 mAh g-1を示し、2サイクル目には多段階の充放電プラトーを経て、276 mAh g-1の可逆容量が得られた。Fe2+/3+およびS2-/1-の酸化還元反応に起因する多電子反応が可逆的に進行したことが示唆された。高い活物質充填率(90 wt%)においても、安定したサイクル特性と大きな可逆容量を発現することを明らかにした。以上により、液相複合化への展開が期待される結果が得られた。 今後は、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極活物質の代わりにLi過剰系や新たに合成した(Li2Fe)SOなどの適用や、固体電解質の材料種や導電助剤の形状最適化により、多電子反応を活用した全固体電池での高容量発現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
均一性を維持しLiイオン・電子伝導性を制御した正極複合体により全固体電池での高容量反応の発現を目指し、以下に示す成果が得られている。そのため、これまでの研究は概ね順調に進展していると言える。 1. 核成長法による正極複合体の作製と全固体電池特性 初年度は、VGCF添加プロセスを検討することで微構造を制御した正極複合体を作製し、電池特性を評価した。VGCFを①乾燥後に乾式で添加、もしくは②前駆体溶液時に添加した複合体、の2種類の方法で作製した。①と②を比較すると、前駆体溶液中にVGCFを添加した②の方で得られる放電容量が増加した。SEM観察により、VGCFがNMC同士をつなぐように分布していることが確認され、電子の橋渡し効果が得られたと考えられる。よってVGCF添加プロセスを検討することで微構造制御が可能であり、前駆体溶液中でVGCFを加えることで電子伝導パスの確保が可能であることを明らかにした。 2. 新規正極活物質の合成 液相複合化を適用できる正極活物質材料の多様化を見据えて、アンチペロブスカイト構造を有する(Li2Fe)SO正極活物質の全固体電池特性評価を行った。初回サイクルの放電容量は約200 mAh g-1を示し、2サイクル目には多段階の充放電プラトーを経て、276 mAh g-1の可逆容量が得られた。Fe2+/3+およびS2-/1-の酸化還元反応に起因する多電子反応が可逆的に進行したことが示唆された。高い活物質充填率(90 wt%)においても、安定したサイクル特性と大きな可逆容量を発現することを明らかにした。液相複合化への展開が期待される結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度ではVGCF添加プロセスを変えることで、正極複合体の微構造制御が可能で、電子伝導パスの確保が可能であることを明らかにした。2022年度以降では、イオン・電子伝導パスを確保し可逆的に高容量を得るために、固体電解質の材料種や導電助剤の形状を最適化する。特に、Li7P2S8I系固体電解質の代わりにLi6PS5Clなどの固体電解質を用いることや、長さの異なるカーボンナノチューブを用いて正極複合体を作製する。作製した複合体は、交流インピーダンス法や直流分極試験、全固体電池試験による評価に加えて、分光法なども活用して複合体を解析する。さらには、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極活物質で最適化した複合化プロセスを基に、Li過剰系や(Li2Fe)SO正極活物質などに展開する。
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Causes of Carryover |
2021年度は、正極活物質・硫化物固体電解質合成や複合化のための試薬一式、不活性ガスグローブボックス用高純度アルゴンガスや、電気化学的解析のための測定セル、電池作製のためのリチウム金属などに使用した。一方で、当初予定していた設備導入の見送りや学会のオンライン開催により、一部残額が生じた。今年度、実験の進捗を踏まえた適切な設備導入や、研究成果公開・議論のための対面学会参加や学外実験などに使用する。
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Research Products
(9 results)