2023 Fiscal Year Annual Research Report
液相複合化による全固体Li二次電池での高容量正極反応の制御
Project/Area Number |
21K14716
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
引間 和浩 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50845617)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 全固体電池 / 液相複合化 / 硫化物固体電解質 / 電気化学的解析 / 断面微構造観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では核成長(SEED)法などの液相法により正極複合体を作製し、全固体電池での高容量の発現を目指している。2023年度は、①SEED法で作製したLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2正極複合体のイオン伝導性・電子伝導性などの電気化学的解析や断面微構造観察を行った。また、②SEED法を次世代型の高容量Li2RuO3正極活物質に展開した。 乳鉢混合で作製したLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2-Li7P2S8I正極複合体は、6サイクル後の放電容量維持率が66.1%であったのに対し、SEED法では99.7%を示した。乳鉢混合では不可逆容量が大きく、放電容量の減少が顕著に表れた一方で、SEED法ではサイクル安定性が向上した。このような差が見られた正極複合体について、断面SEM-EDX観察を行ったところ、SEED法で作製した正極複合体では、乳鉢混合の正極複合体よりも固体電解質が均一に分布していることが分かった。また、SEED法で作製した固体電解質単体のイオン伝導性は、乳鉢混合で使用した固体電解質に比べ一桁以上低いものの、それぞれの正極複合体のイオン伝導性は同等の値を示した。よって、液相内で複合化させることで均一なイオン伝導パスが形成され、活物質利用率が向上したとともに、正極活物質の膨張・収縮を緩和して安定性が向上したと考えられる。以上より、SEED法で作製した正極複合体が持つユニークな断面微構造を明らかにした。 また、②について、Li2RuO3正極活物質を使用した複合体では、SEED法で複合化することで初回放電容量の大幅な向上(100 mAh g-1)が見られた。これは複合体内で均一にイオン伝導経路を構築することで、イオン伝導性の低いLi2RuO3正極活物質を効果的に電池反応に活用できたためと考えられる。このことから、新規正極活物質へのSEED法適用の見通しを立てることができた。
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