2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K14748
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
澄本 慎平 神奈川大学, 工学部, 助教 (20852502)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 気生シアノバクテリア / 天然物 / 生物活性物質 / ゲノム / 微生物資源 / HeLa細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
新たな天然物ソースとして気生シアノバクテリアを用いて有用物質の探索を行なった。小規模で培養を行って得られた気生シアノバクテリア抽出物を生物試験に使用した。その結果、4株由来の気生シアノバクテリア抽出物でヒト子宮頸がん由来の細胞であるHeLa細胞への増殖阻害活性が確認されたため、該当する4株を有用物質生産株として大規模での培養を行なった。 一般的に、シアノバクテリアは他の微生物に比べて圧倒的に生育速度が遅いために、培養期間が研究の律速になることが想定された。実際に気生シアノバクテリアも生育速度は遅く、研究を進めるために培養条件の検討が必須となった。培養条件の検討は問題なく完了し、通常の条件では十分な菌体量を確保するのに1年以上も培養する必要があったのに対し、2~3ヶ月で十分な菌体量が得られるまでに改善できた。 実際に大規模での培養を行い、得られた気生シアノバクテリア抽出物より有用物質の探索を行なったところ、HeLa細胞に対する増殖阻害活性が消失した。これは培養条件が有用物質の生産能力を左右することを示しており、菌体の増殖に適していた条件が有用物質の生産には適していないことが判明した。このため、菌体の増殖とは別に、有用物質の生産を誘導する培養条件を検討する必要があった。検討の結果、1週間ほど培養することで有用物質の生産を誘導できる培養条件を発見することができた。この培養条件を2株の有用物質生産株に試したところ2株とも有用物質の生産が確認されたため、今後は2~3ヶ月で十分な菌体量が得られるまで培養を行なったのちに、1週間ほど有用物質の生産を誘導することで有用物質を単離できると期待される。 上記の通り、本年度では1. 有用物質生産株の選定、2. 大規模での培養条件の検討、3. 有用物質を生産する培養条件の検討、を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の想定通り、通常の培養条件では培養速度が遅かったため研究進捗の遅れが懸念されたが、培養条件を検討することで問題ない程度まで改善された。その一方で、気生シアノバクテリアの増殖に適した条件で培養すると有用物質の生産能力が失われるという、想定外の事態に直面した。現在では有用物質を生産する培養条件が判明したので、異なる培養条件を組み合わせて行うことで、この問題に対処できることが判明した。想定外の問題が生じたものの解決策を得ることができたため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
大規模培養と有用物質の生産誘導それぞれに適した培養条件が判明したため、選定した有用物質生産株に適用して有用物質の単離と構造決定を行う。 今回、培養条件により有用物質の生産性が変化するという想定外の結果が得られた。有用物質の生産誘導に適した培養条件が判明しており、その再現性も確認している。しかし、どの程度の培養株に適用できるかは依然として不明瞭であり、他の有用物質生産株にも適用できるかを確認する必要がある。また、培養条件により有用物質の生産性が変化するという結果から、有用物質生産株の選定結果を見直す必要がある。つまり、有用物質生産株の選定を行なった際の培養条件が有用物質の生産に適していなかった場合、有用物質生産株を見落としていた可能性がある。
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