2022 Fiscal Year Research-status Report
Novel chromatin dynamics analysis exploiting double strand cleavage on DNA
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21K14751
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
橋谷 文貴 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (30846423)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | DNA光切断 / DNA二本鎖切断 / ヌクレオソーム / ニトロベンジル光保護基 / 2'-Se nucleotide |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は光照射によりヌクレオソーム上のDNAに二本鎖切断を誘導し、その挙動を確認するものである。二本鎖切断は致命的なDNA損傷の一つであり細胞内でこれが起こった場合、直ちにDNA複製が停止し修復系が働くことが知られている。しかし二本鎖切断部位周辺にヒストンバリアントであるH2A.Xがリン酸化されたγH2A.Xがマーカーとして集積することはわかっているものの、詳しい集積メカニズムは不明である。これはDNA修復の研究が主に細胞を用いたin vivo実験で行われてきたことが原因であり、詳細なメカニズムを調べるにはin vitro実験系の構築が求められている。そこで光照射で切断を誘導できる化学修飾DNAを用意し、これを用いてヌクレオソームを再構成することで任意のタイミングで二本鎖切断を起こす実験系の確立を目指した。 光照射で切断できるDNAは2’位にセレノ基とニトロベンジル基修飾を施すことで達成した。光照射によりニトロベンジル基が外れ、活性化されたセレノ基によってDNA鎖切断が誘導される。実際の切断実験から短時間の光照射で定量的に切断反応が進行することが分かった。また元々はDNAの接着末端を形成する技術であったことから、本化学修飾を用いたプラスミド構築実験を行った。こちらに関しても光照射による鎖切断により接着末端が形成され効率的なDNA連結反応が確認できた。本修飾DNAは光照射によって任意のタイミングで二本鎖切断を起こすものである。よってin vivo実験への応用を見越して本修飾で生じた二本鎖切断が細胞内の機構によって修復されうるのかどうかをレポーターアッセイによって評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は細胞内における光切断修飾の切断活性と修復の評価を行った。本研究で用いる光切断は2’位にセレノ基とニトロベンジル基修飾をもっており、光照射によってニトロベンジル基が外れることでセレノ基が活性化され鎖切断を起こす。In vitroにおいてDNAオリゴを用いた実験から10分の光照射で96%が切断されることが確認でき、切断反応が定量的に起こることが分かった。一方で細胞内でも同様の切断反応が起こるかどうかは不明であった。そこで両端を蛍光修飾したDNAオリゴを用意し、HeLa細胞に導入後光照射を行うことでFRETによる切断活性を評価した。フローサイトメトリーによる解析の結果、DNAオリゴを取り込んだ細胞の60%で光照射によるFRETを確認できており、細胞内においてもin vitroと同様に高い切断効率を示すことが分かった。さらに光照射によって細胞内で生じた二本鎖切断部位が修復されるのかどうか確認した。まずCMVプロモーターとGFPのCDSをそれぞれコードしたDNAを設計した。これをニトロベンジル基修飾ヌクレオチドを介して環状化し、光照射による二本鎖切断によって直鎖化できるようにした。In vitroでは光照射によって定量的に直鎖DNAが生じることを確認したのちに、HeLa細胞へと導入した。光照射によって切断されたDNAがHDRによって修復された場合、CMVプロモーターとGFPのCDSが連結し緑色蛍光が観察される。実際にDNAの導入と光照射を行ったところ緑色蛍光が確認できたものの、未照射サンプルにおいてもある程度の蛍光が生じており、有意な差は確認できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究から2’-Seニトロベンジル保護基を持つDNA鎖は細胞内においても光照射によって効率的に切断されることが分かった。しかし本光切断修飾は切断されたDNAの3’側の鎖に残る。このためDNA修復に影響を与える可能性があり、実際HDRによる二本鎖切断修復は確認できなかった。よって来年度において修復ではなく、当初の予定通り光照射による切断誘導とそれによるヌクレオソームの変化に集中して研究を遂行する。具体的には実際にこの化学修飾を含んだDNA鎖を用意する。配列としてはヒストン八量体と効率よく結合しヌクレオソームを形成しやすい人工配列である601配列を想定している。この際、両側の鎖の対になる部分に本化学修飾を配置し、光照射によって二本鎖切断が生じるかどうかをまず確認する。その後実際にヌクレオソームを形成し、これに対して光照射を行うことで二本鎖切断を誘導しヌクレオソーム構造に与える影響を評価する。 その後、二本鎖切断後のH2A.Xのリクルートについて評価する。昨年度の研究においてリコンビナントのH2A.Xの調製は確立しているため、H2A.Xを用いてヌクレオソームを再構成し二本鎖切断による構造変化への影響を評価する。続いて二本鎖切断後のH2A.Xの挿入を確認するためH2A.X存在下、ヌクレオソームに光照射し二本鎖切断を誘導する。H2A.Xの挿入確認はNative-PAGEによるヌクレオソームの分離精製後、SDS-PAGEによってヒストンモノマーを確認することで行う。またH2A.Xの挿入にはクロマチンリモデラーが必要な可能性が示唆されている。よって培養細胞からクロマチンリモデラーを含む核抽出液を調製し添加する。以上の実験により二本鎖切断後のH2A.X挿入において必要な因子の特定を試みる。
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Causes of Carryover |
クロマチンリモデラータンパク質の購入を見越して物品費を計上していたが、培養細胞から核抽出液を作成する技術を確立できたため購入を見送った。またコロナパンデミックが落ち着きオンサイトでの学会報告が増えると見越して旅費を計上したが、年度前半はオンライン開催となったため次年度使用額が生じた。物品費については細胞培養用品の購入に充てることでリモデラータンパク質内製態勢を整えるのに使用する予定である。また旅費に関しては学会発表の機会を増やし幅広く研究を周知するのに利用する予定である。
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Research Products
(3 results)