2021 Fiscal Year Research-status Report
アロステリック機構に基づく14-3-3アイソフォーム選択的阻害剤の開発
Project/Area Number |
21K14755
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
西山 康太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (40803218)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 14-3-3 / ケミカルバイオロジー / シロイヌナズナ / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
14-3-3は、あらゆる真核生物が持つ「ハブ」であるが、構造が類似した複数のアイソフォームが存在するため、個々の機能を制御するための方法は確立されていない。本研究は、独自に開発している14-3-3を標的とした共有結合型アロステリック阻害剤を用いて、そのアイソフォーム選択性の評価や改良、および植物の機能制御への展開を目指している。本年度は、7種類のシロイヌナズナ14-3-3アイソフォームに対して、それぞれ阻害剤の効果を詳細に調査した。まず、蛍光偏光法による14-3-3とリン酸化ペプチドとの相互作用に対する阻害効果の濃度依存性(IC50値)を算出した。加えて、14-3-3と阻害剤とが共有結合を形成して阻害するまでの速度定数を解析し、阻害効果を定量的に評価した。その結果、系統学的に区別される2種類のシロイヌナズナ14-3-3サブグループのうち、片方のサブグループに対して、より高い阻害効果を示すことが示された。そのため、この阻害剤が高いアイソフォーム選択性を示し、優れた生物活性分子であることが示唆された。シロイヌナズナ14-3-3の両サブグループが異なる生理的機能を示すことが示唆されているが、その詳細は分かっていない。本阻害剤は、これらを植物体内で区別して制御することが期待でき、植物を理解するための分子ツールとして有用である。また、阻害剤と14-3-3との共結晶化を進め、その阻害機構の解明と、阻害剤の構造ベースデザインへの展開を目指した。解析には至らなかったが、微結晶を取得することに成功し、結晶化条件の最適化を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
14-3-3と阻害剤との共結晶構造の解析には至らなかったものの、微結晶の取得に成功し、条件の最適化によって次年度における解析が期待できる。また、詳細なin vitro評価の結果、阻害剤が想定以上に高い阻害効果とアイソフォーム選択性を示した。そのため、本研究の目的である、非常に類似した14-3-3アイソフォームを高度に見分けて阻害するための分子基盤として、本阻害剤は非常に優れていることが実証された。さらに、本阻害剤を植物へ投与することで、効果的に植物機能を制御できると期待できる。以上を総合的に考え、順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、14-3-3阻害剤の構造活性相関研究や共結晶構造解析などをベースに、より優れた阻害剤の開発を進める。すでに、阻害剤の構造において、阻害に重要な官能基を特定しているため、効率的な構造活性相関研究を展開できると期待できる。また、14-3-3と阻害剤との複合体溶液から微結晶を得ているため、この条件を元にした条件最適化や、微結晶を種結晶としたシーディング法によって、構造解析が可能な良質な結晶の取得を目指す。また、シロイヌナズナをモデルとして、阻害剤の植物活性を調査する。すでにシロイヌナズナの栽培や化合物評価法は確立しているため、評価を行うための障壁はなく、効率的に実験を進めることができる。当初予定していた花成の制御に加え、14-3-3が関与している気孔の開口、根の伸長、葉緑体の生産など、多岐にわたる植物機能の制御を検討する予定である。
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