2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism of cooperative sulfur metabolism between Lotus japonicus and Mesorhizobium loti.
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21K14760
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
福留 光挙 香川大学, 農学部, 助教 (40882949)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 活性イオウ分子種 / 根粒共生 / 植物微生物間相互作用 / 硫黄代謝 / ミヤコグサ / 根粒菌 / 活性分子種 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミヤコグサと根粒菌の根粒共生中に産生される活性イオウ分子種(RSS)の、分子構造および代謝メカニズムの解明を目指し、研究に取り組んだ。本年度は、RSS産生酵素の共生中の硫黄代謝とアミノ酸代謝への関与について主に検討した。これまでに哺乳動物や大腸菌でRSS産生に寄与することが報告されてきた、シスタチオニンγリアーゼ(CSE)、システイニルtRNA合成酵素(CARS)、3-メルカプトピルビン酸硫黄転移酵素(3MST)が変異した根粒菌を用いて、着生根粒中の硫黄代謝産物、および、アミノ酸代謝産物を解析した。硫黄代謝産物はサルファーインデックス解析により68化合物について解析し、28化合物が根粒から検出された。CSE、CARS、3MSTのいずれの変異株が着生した根粒でも、野生株と比べ複数の硫黄化合物量が変化していることを見出した。また同様に、複数のアミノ酸量についても変化していた。これらの結果から、共生根粒菌のRSS産生酵素の異常が、宿主植物との共生器官である根粒でも、硫黄代謝やアミノ酸代謝に影響することが示された。変異株の着生根粒で含有量が変化した硫黄化合物の中には、活性イオウ分子種も含まれていた。いずれの活性イオウ分子種も、野生株と比べ変異株の着生根粒で少なかった。特に、システインパースルフィドとグルタチオンパースルフィドの量の変化が顕著であった。これまでのRSS特異的蛍光プローブを用いた実験から、RSS産生酵素変異株の着生した根粒では、感染細胞での蛍光強度が弱く、RSS産生量の減少が示唆されていた。今回実施した硫黄化合物の網羅的な解析により、減少しているRSS分子について詳細が明らかとなった。CSE、CARS、3MSTの変異がそれぞれ硫黄代謝やアミノ酸代謝に及ぼす影響の共通点・相違点についても、今回の解析によりわかりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は「活性イオウ分子種(RSS)の根粒共生での役割」と「RSS産生酵素の共生中の硫黄代謝とアミノ酸代謝への関与」の解明に取組んだ。具体的には、ミヤコグサの共生根粒菌であるMesorhizobium lotiのシスタチオニンγリアーゼ(CSE)、システイニルtRNA合成酵素(CARS)、3-メルカプトピルビン酸硫黄転移酵素(3MST)遺伝子の変異が根粒共生に及ぼす影響、および、RSSの産生に及ぼす影響について検討した。いずれの変異根粒菌でも、着生根粒で窒素固定活性の低下を示し、共生に異常が生じた。同時に、RSS特異的蛍光プローブの蛍光強度から感染細胞のRSS量を評価したところ、すべての変異株でRSS量の減少を示した。以上の結果より、根粒菌のRSS産生が正常な共生成立に必要であることを示唆する知見を得た。また、硫黄代謝産物やアミノ酸の網羅的解析により、CSE、CARS、3MSTの変異株が着生した根粒では、硫黄代謝産物やアミノ酸のプロファイルが野生型と異なっていること、さらに、主要なRSSであるパースルフィドおよびポリスルフィドの量が減少していることを見出した。硫黄代謝産物やRSSの変動パターンはCSE、CARS、3MSTの変異株でそれぞれ異なったパターンを示しており、これらの表現型は、複数の経路を介したRSSの産生が、共生成立に寄与している可能性を示唆した。現在はCSEの変異がRSS代謝に及ぼす影響についてこれまでの成果をまとめ、国際誌への投稿準備を進行している。 本年度は、所属機関の変更に伴い、必要な機材の調達や環境構築に予定外の時間を要した。一方で、根粒菌のRSS産生酵素の変異については、共生表現型と硫黄代謝の異常を確認し、根粒菌のRSS代謝と根粒共生確立の関係解明に向け、本研究テーマが大きく進展した。したがって、「おおむね順調に進展している」と総評した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度までに得られた結果をもとに、シスタチオニンγリアーゼ(CSE)、システイニルtRNA合成酵素(CARS)、3-メルカプトピルビン酸硫黄転移酵素(3MST)がそれぞれ、どのような活性イオウ分子種(RSS)のどの産生プロセスで必要とされるのかをまとめ、国際誌への投稿を目指す。 また、共生器官での硫黄代謝では宿主植物に依存した代謝経路も利用している可能性が考えられるため、「根粒における宿主植物の硫黄代謝経路」についても詳細に検討する。具体的には、根粒で共生根粒菌に硫黄源を供給するトランスポーターであるSst1遺伝子の変異系統を用いて、根粒内での硫黄代謝遺伝子の発現を野生型系統と比較する。根粒共生時に発現変動している硫黄代謝遺伝子や、野生型系統とsst1変異系統で発現パターンが異なる遺伝子をピックアップする。根粒菌のCSE、CARS、3MSTが関与する硫黄代謝経路と照らし合わせ、宿主植物と共生根粒菌がどのように硫黄代謝の役割を分担しているのか推定、および、検証する。 本年度までに、根粒内での硫黄代謝異常によって大きく影響を受けるRSSがシステインパースルフィドやグルタチオンパースルフィドなどのいくつかの分子であることが明らかとなった。次年度からは、様々な条件・サンプルでRSS量を測定する必要があるため、低コストで特定の硫黄代謝産物量を測定する手法を確立する。具体的には、モノブロモビマンによる硫黄化合物の安定化と四重極型LC/MS/MS解析を組み合わせ、多検体解析の実用化を目指す。
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Research Products
(8 results)