2022 Fiscal Year Research-status Report
分裂酵母における新規キナーゼNnk1による寿命制御機構の解明
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21K14769
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
島崎 嵩史 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (50821998)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経時寿命 / 寿命延長 / 分裂酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分裂酵母における新規寿命関連因子Nnk1による寿命制御機構の解明を目指し、解析を行っている。nnk1+遺伝子は分裂酵母の生育に必須であり、コードしているタンパク質内にはキナーゼドメインと予測される配列が存在しているが、Nnk1タンパク質の基質や生理学的機能については今のところ明らかになっていない。しかしながら過去に、新規寿命制御因子の同定を目的とした長寿命変異株のスクリーニングが行われ、nnk1+遺伝子において生じた変異(nnk1-35 変異)が経時寿命の延長を引き起こすことが明らかとなっている。本研究ではこのNnk1タンパク質の標的基質および下流で機能する因子を明らかにし、Nnk1タンパク質による未知の寿命制御機構の解明を目指し、より高等な生物種の寿命制御機構の解明に寄与する可能性のある新たな知見を得ることを目的としている。解析にあたって、まずはnnk1-35変異の近傍にkanRを導入した株が顕著な高温感受性を示したため、この株に分裂酵母のプラスミドゲノムライブラリーを導入し、高温感受性を回復するスクリーニングを実施した。その結果、いくつか高温感受性を回復する株が取得されたが、いずれの株のプラスミドにも野生型のnnk1+遺伝子がコードされており、Nnk1以外の新規の因子の同定には至らなかった。Nnk1タンパク質のリン酸化基質の同定に関しては、nnk1-35変異株において細胞壁ストレス応答に関与するMAPKの一種であるPmk1のリン酸化レベルが低下することを新たに見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
作製したnnk1-35-kanR変異株に顕著な高温感受性が観察されたため、ゲノムライブラリープラスミドを導入することでこの表現型を回復する因子のスクリーニングを進めていた。その後、この高温感受性を回復した株がいくつか取得されたが、表現型の回復に関与する遺伝子の同定をシーケンス解析によって進めた結果、いずれも野生型のnnk1+遺伝子がコードされていたため新規の遺伝子の同定には至っていない。Nnk1タンパク質のリン酸化基質の同定に関しては、Pmk1が1つの候補として同定されたため、直接的にリン酸化が行われるか等について検証を進めている。。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、nnk1変異株由来のゲノムライブラリーを用いたnnk1-35-kanR変異株の温度感受性を相補する因子の取得と同定を目指す。Nnk1のリン酸化基質の同定に関しては、Pmk1が1つの候補として同定されたため、Pmk1のリン酸化に関与する具体的なメカニズムについて解析を行っている。また、その他のリン酸化基質の同定についても引き続き網羅的な解析を続ける予定である。今後、これらの解析結果をまとめた上で、論文発表や学会発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初に想定していたほど順調には研究が進まなかったため、その分の余剰が発生した。 今後、多少の研究計画の見直しは生じるが、計画全体の方向性は変わらないため、使用計画に変更はない。
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