2021 Fiscal Year Research-status Report
Circuit-in-community resource allocation model to design synthetic live bacterial therapeutics
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21K14779
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
鄭 美嘉 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭技術開発プログラム), 特任研究員 (00846438)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 合成生物学 / マイクロバイオーム / 抗生物質生産 / コミュニティモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
病原菌の繁殖は公衆衛生上の大きな懸念である。例えば敗血症などの細菌関連疾患は世界中で4,000万人以上に影響を及ぼし、世界の年間死亡者数の約20%を占める。病原体の存在を一早く感知し、特異的に侵入を阻害する有用微生物・プロバイオティクスの活用は、標準的な抗生物質による治療と比較して病原菌の抗生物質耐性がつきにくい等の利点が示唆されている。しかし、多くの環境ではこれらの有用微生物は定着せず、実用性に大きな課題がある。有用微生物の難定着性について明らかにするため、私はモデル微生物である大腸菌に、黄色ブドウ球菌を始めとするグラム陽性菌に特異的に作用する抗生物質ヴィオラセインの合成回路を実装し疑似有用微生物を作成した(以降Vio株と呼ぶ)。 大腸菌Vio株とグラム陽性菌を共培養したところ、合成回路を多量発現させた条件では、初期段階ではグラム陽性菌の繁殖を完全抑制したが、Vio株の分裂も停止したため、後期ではグラム陽性菌に淘汰された。一方、少量発現させた条件では初期段階では抑制効果は小さかったが後期ではグラム陽性菌を完全に抑制しVio株が定着した。 これを説明するため、Vio株の細胞内資源配分モデルを構築した。細胞分裂率を生命維持に必要な遺伝子群のタンパク質生成速度に比例すると定義し、かつ細胞内リボソーム数が一定と仮定したとき、合成回路の発現により細胞分裂率が低下する。これにより、Vio株の自己増殖率とヴィオラセイン合成量の相反関係を導き出した。 自己増殖率の低下はVio株の生存戦略に置いてのコストであり、合成量は便益に通じる。抗生物質で他の細菌の繁殖を抑制することで環境中のリソースを自由に使用できるようになるからである。つまり定着性とは有用物質の産出による便益がコストを上回るかどうかで決定すると考察した。 本研究を通して、持続的に感染の脅威と戦う効果的な微生物の解明につながると期待する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヴィオラセイン合成遺伝子のゲノム組込みが安定しないため、外部で関連株を作成した際の試験データを使用している。理論構築については、計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヴィオラセイン産出による便益を定量的に定義できるような数理モデルを構築し、定着性に関しての費用便益分析を導き出す。
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Causes of Carryover |
今年度遺伝子組換えが不安定で、抗生物質生産株の実装化に遅れが生じたため。
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