2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism of polyamine-induced enhancement of light energy utilization efficiency in plant chloroplasts and cyanobacteria
Project/Area Number |
21K14780
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
辻井 雅 東北大学, 工学研究科, 助教 (30865887)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イオン輸送体 / 光合成 / ポリアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は植物の葉緑体内における光環境応答機構の解明を目指す。特に葉緑体内のプロトン濃度はチラコイド膜を介したプロトン駆動力の形成、制御に重要であると考えられる。申請者は植物葉緑体の祖先である藍藻を用いて、プロトン輸送体の解析を行った。藍藻はNa+/H+ アンチポーターを6個保持しており、その欠損株を全て作製し、光環境への応答を解析した。その結果、藍藻が保持する2つのNa+/H+ アンチポーターが光環境応答に重要であることを明らかとした。さらにクロロフィル蛍光測定装置を用いて光合成電子伝達の解析を行なった。その結果、2つのNa+/H+ アンチポーターが光合成電子伝達の制御に重要であることが明らかとなった。また、K+チャネル、Cl-チャネルについても同様に欠損株を作製し、表現系観察、電子伝達の制御を解析しているが、解析途中である。 また、ポリアミンはプロトンとの結合能を有しているため、ポリアミン合成はチラコイド膜を介したプロトン駆動力に影響を与えることが考えられる。申請者は、ポリアミンもしくはポリアミン前駆体の合成酵素を単離し、その合成活性を測定した。その結果、藍藻におけるポリアミン合成経路を特定するに至った。また、その欠損株を作製し、その表現型観察を行なった。その結果、プトレシン合成酵素による光合成電子伝達制御が藍藻の生育に重要であることを解明した。また、チラコイド膜を単離後、膨潤を観察した結果、チラコイド膜はポリアミン透過活性を保持していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、Na+/H+ アンチポーターの輸送活性と局在を解析した。その結果、藍藻のNa+/H+ アンチポーターは全て Na+/H+ 輸送活性を保持していることを明らかとした。また、Na+/H+ アンチポーターと GFP の融合タンパク質を発現させ、ウエスタンブロッティングにより局在解析を行なった。その結果、Na+/H+ アンチポーター6個全ての局在を同定することに成功した。次に、欠損株を作製し、光環境応答を解析した結果、2つの Na+/H+ アンチポーターが光環境応答に重要であることを明らかとした。DUAL-PAM を用いて光合成電子伝達活性の詳細な解析を行なった結果、2つの Na+/H+ アンチポーターは光環境の変動に対して電子伝達を制御するために重要であることを証明した。 ポリアミン合成酵素の解析も行なった。ポリアミン合成酵素の一つであるプトレシン合成酵素の欠損株を作製し、光環境応答を解析した。その結果、プトレシン合成酵素欠損株は野生株と比較して生育が悪いことが明らかとなった。また、光合成解析を行なった結果、プトレシン合成酵素は光化学系の電子伝達を維持するために重要であることを証明した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、藍藻の細胞内ポリアミンとプロトンの濃度が光合成制御に重要であることが明らかとなった。しかしこれまでの研究では、チラコイド膜を介したポリアミン輸送は明らかとなっていない。今後は、チラコイド膜を介した物質輸送に着目して研究を進めていく。 具体的には、チラコイド膜を単離後、その膨潤を測定する。その後ポリアミン輸送を担う輸送体を精製することで、同定を行う。また、ポリアミンやプロトンの輸送だけでなく、他イオンにも着目して研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
実験計画の都合上、消耗品購入の次年度への繰越を行った。具体的には、チラコイド膜の膨潤を測定するための脂質の購入を次年度へと繰り越した。
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[Presentation] シロイヌナズナの地上部に発現するカリウムイオン輸送体KUP12の解析2021
Author(s)
山梨太郎, 東大起, 内山剛志, 白川由美子,池田隼人, 菊永英寿, 須田利美, 山上睦, Ellen, 辻井雅, 石丸泰寛, 魚住信之
Organizer
日本植物生理学会年会2022年
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[Presentation] 植物K+トランスポーターによる 他イオン吸収の調節2021
Author(s)
山梨太郎, 東大起, 内山剛志, 池田隼人, 菊永英寿, 須田利美,佐々木涉太, 高島圭介, 金子俊郎, 山上睦, Ellen, 辻井雅, 石丸泰寛, 魚住信之
Organizer
生物工学会北日本支部2021 年度第一回オンライン若手シンポジウム