2021 Fiscal Year Research-status Report
単純ヘルペスウイルス1型におけるインターフェロン抑制機構の構造基盤
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21K14787
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
小林 淳 国立感染症研究所, インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター, 研究員 (00834433)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 単純ヘルペスウイルス1型 / 病原性因子 / 宿主因子 / 立体構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘルペスウイルス感染症の治療には一定の割合で耐性ウイルスが出現し、新たな作用機序の治療薬が求められている。また、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)を改変することで、腫瘍細胞のみを破壊するウイルス療法薬としてデリタクト注が2021年に承認された。次世代のヘルペスウイルス感染症治療薬/ウイルス療法薬を迅速かつ合理的に開発するため、本研究ではHSV-1の増殖機構をタンパク質構造レベルで明らかにすることを目的とし、HSV-1の主要な病原性因子であるγ34.5とγ34.5が結合するヒトタンパク質の複合体立体構造解析を行っている。 γ34.5の立体構造解析を行うため、大腸菌を宿主とした大量発現系の構築を行った。γ34.5は反復配列が多く、強塩基性タンパク質であるからか、一般的に使用される大腸菌では全く発現しなかったため、特殊な大腸菌を使用することで可溶性画分に発現させることに成功した。しかし、発現量は低く、さらに宿主タンパク質と非特異的なジスルフィド結合を形成した。ジスルフィド結合を抑制するためジチオスレイトールを添加することを考えたが、下流工程のHis-tagを用いたアフィニティークロマトグラフィーによる精製のことを考え、システインをセリンに変異させた変異体を作成した。発現量が著しく低下したセリン変異体があったため、全てのシステインをセリンに変異させることはできなかったが、非特異的な結合を抑制し、発現量を改善することができた。さらにセリン変異体は非特異的な結合を抑制したままHis-tagを用いたアフィニティークロマトグラフィーによる精製を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初からγ34.5の発現・精製は困難であると予想していたが、発現宿主の変更、変異導入などの検討により、発現量を改善・安定化し、アフィニティー精製できたことは評価できる。また、所属の変更があり、これまで行ってきた実験系の立ち上げを新しい所属先で行う必要があった。これらの理由から、当初予定していたヒトタンパク質の発現条件検討とγ34.5/ヒトタンパク質複合体の親和性測定は実施できなかったため、やや遅れている、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、γ34.5を結晶化シャペロンとして知られているmaltose-binding protein (MBP) との融合タンパク質として発現させることで、さらに宿主タンパク質との非特異的な結合を抑制しつつ、より簡単に結晶化できないか検討を行っている。また、コムギ無細胞合成系を用いた発現検討も行っており、タンパク質発現にかかる時間を短縮するための検討を行っている。γ34.5が0.5 mg以上得られるような発現・精製法を早期に確立し、まずはMBP-γ34.5のX線結晶構造解析を行う。タンパク質の結晶化には時間を要するため、その間にヒトタンパク質の発現・精製法の確立とγ34.5/ヒトタンパク質複合体の親和性測定を行う。今年度中にγ34.5/ヒトタンパク質複合体の立体構造解析に取り掛かる。
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Causes of Carryover |
所属の変更があったため。
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