2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism of female-specific anorectic effect of the microbial-derived isoflavone metabolite S-Equol
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21K14805
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
藤谷 美菜 愛媛大学, 農学研究科, 講師 (70737402)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大豆イソフラボン / エコール / 食欲 / 抱合体 / 胃排出 / urocortin / obestatin / des-acyl ghrelin |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、大豆イソフラボン・ダイゼインまたはその腸内細菌代謝物エコールをラットに摂取させると、雌特異的に、そして、胃が食物で満たされているとき特異的に飼料摂取量が減少することを見出した。ラットが摂取したダイゼインは体内ではほとんどがエコール抱合体として腸肝循環中に存在しており、胆汁中ではエコール4’位グルクロン酸抱合体が卵巣の有無にかかわらず雌特異的に存在している。本研究では、エストロゲン欠乏により過食となる卵巣摘出ラットにエコールを混餌投与し(25、50、100 mg/kg飼料)、飼料摂取量と胆汁中エコール抱合体濃度との相関を検討した。ラットの胆汁中にはエコール4’位グルクロン酸抱合体と7位硫酸抱合体が存在しているが、飼料摂取量と負の相関が見られたのは4’位グルクロン酸抱合体のみであった。エコール4’位グルクロン酸抱合体が本効果に関与している可能性が高いと考えられる。 暗期中に2回、2時間おきに各1時間給餌する2食制で飼育した卵巣摘出ラットにダイゼインを混餌投与したところ飼料摂取量は2食目特異的に減少し、視床下部ウロコルチン遺伝子発現および小腸粘膜プレプログレリン遺伝子発現の有意な増加が見られた。視床下部ウロコルチンは胃排出遅延および食欲抑作用を示す。また、プレプログレリンに由来するデスアシルグレリンやオベスタチンは視床下部ウロコルチンニューロンの活性化を介して胃排出を遅延させ食欲を抑制することが報告されている。我々は2食制で飼育した卵巣摘出ラットにダイゼインを摂取させ、視床下部ウロコルチン遺伝子発現および小腸粘膜プレプログレリン遺伝子発現の増加が見られた2食目食中で血中オベスタチン、デスアシルグレリン濃度を測定したが、増加は見られなかった。ダイゼイン摂取による視床下部ウロコルチン遺伝子発現増加は血中オベスタチン、デスアシルグレリン濃度の上昇によるものではないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に予定していた作用型エコール抱合体を特定するための研究は、エコール4’位グルクロン酸抱合体、7位硫酸抱合体を大量に入手するために時間を要し実施できなかった。しかし、ダイゼイン摂取により視床下部ウロコルチン遺伝子発現の増加が再現的に確認され、このウロコルチン遺伝子発現増加のメカニズムについて検討を進めており、視床下部ウロコルチンがダイゼイン摂取による食欲抑制作用に関与するのかを検証するための実験系の検討も進んでいるため、概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
エコール4’位グルクロン酸抱合体および7位硫酸抱合体を大量に入手する方法として酵素合成を考えていたが、これまでの研究で得られたラットの胆汁から分取する方法についても検討を進めている。2022年度はいずれかの方法でエコール4’位グルクロン酸抱合体および7位硫酸抱合体を入手し、これらを十二指腸カテーテルより注入し飼料摂取量への影響を検討することで、作用型エコール抱合体を明らかにする。 ダイゼイン摂取により視床下部ウロコルチン遺伝子発現が増加することが明らかになったが、視床下部ウロコルチンが食欲抑制作用に関与するのかは不明であるため、ダイゼイン摂取による飼料摂取量の減少が見られたラットにCRF2型受容体アンタゴニスト(astressin 2B)を脳室内カニューレより投与し、ダイゼイン摂取による食欲抑制作用が減弱または消失するのかを検討する。 2食制で飼育した卵巣摘出ラットでダイゼイン摂取による有意な飼料摂取量の減少が見られる2食目で、小腸粘膜GIP遺伝子発現の有意な増加が再現的に確認されたことから、1食目直前・食中・食後、2食目直前・食中・食後の血中GIP濃度を測定する。GIPはGLP-1と相互作用することで満腹感を増大させると考えられることからGLP-1濃度も測定する。ダイゼイン摂取による飼料摂取量の減少と血中GIPおよびGLP-1濃度の増加に関連性が見られた場合、GIPアンタゴニスト、GLP-1アンタゴニスト、またはその両方を腹腔内投与することでダイゼイン摂取による食欲抑制作用が減弱または消失するのかを検討する。
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Causes of Carryover |
2021年度に予定していた作用型エコール抱合体を特定するための動物試験は、エコール4’位グルクロン酸抱合体、7位硫酸抱合体を大量に入手するために時間を要し実施できなかったため、次年度使用額が生じたが、これは当初の計画通りの動物試験を行うために使用する。
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