2021 Fiscal Year Research-status Report
緑茶カテキン類による細胞融合と破骨細胞分化制御機構の解明
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21K14815
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
栗谷 健志 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (10835309)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | EGCg / 細胞融合 / 破骨細胞 / カテキン類 / RAW264.7 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はカテキン類添加による細胞多核化に関わる因子を特定しすることを目指し,遺伝子発現解析に焦点を当てて実験を行った。 破骨前駆細胞であるRAW264.7細胞にエピガロカテキンガレート (EGCg) を添加し,多核化が亢進した細胞群における遺伝子発現をマイクロアレイにより網羅的に解析した。比較対象として薬剤未処理群あるいは破骨細胞への分化誘導を行ったRANKL/M-CSF添加群を用いた。細胞を播種しα-MEM培地中で3日間培養後,RNAを回収し遺伝子発現解析に供した。細胞融合に中心的な役割を果たすDC-STAMPとそのリガンドやシグナル伝達経路に関与する遺伝子の変動が予想されたが,解析の結果,それらの遺伝子も含めて多くの遺伝子群が変動していることが明らかとなった。例えば細胞周期制御関連遺伝子をはじめ,比較的影響の大きい遺伝子群の変動も認められた。 上述のDC-STAMPを含む細胞多核化関連遺伝子を中心にいくつかの遺伝子を候補として,リアルタイムPCRにより遺伝子発現の定量を行った。その結果,未処理群と比較しEGCg添加群は細胞多核化関連遺伝子の有意な発現上昇が認められた。これらのことは,マイクロアレイによる解析結果と相関性を示すものであり,また再現性が確認できたことから,信憑性の高い網羅的な発現解析結果を得ることができたと思われる。これを元に解析を進めることで,計画通りEGCgによる細胞融合の経路を解明することができると考えており,候補遺伝子について細胞の多核化・融合に対する影響の検討を引き続き行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に従い,遺伝子発現解析までは概ね順調に完了した。マイクロアレイによる解析によって想定以上に変動している遺伝子群が多く認められたため,本年度も引き続き解析を行いより多くの候補を絞ることにした。一方でそれらの差は顕著とは言い難いものも多く,明確な経路を提示できる結果ではなかったためマイクロアレイの結果のみから断定することは困難であった。優先順位が高いものについて解析を進める一方で,変動のあった遺伝子一つ一つを機能や先行研究から多核化との関連について精査し絞り込みを進めている。リアルタイムPCRにより解析を行った結果,信憑性の高い網羅的な解析結果を得られ,実験手技についても問題ないことが確認でき解析は順調に進んでいると言える。しかし,一部の項目については方向転換を余儀なくされた。具体的には,多核化した細胞の貪食能を蛍光ビーズを用いた解析により明らかにすることを目指し,検討を進めていたが議論に時間が必要な点が生じた。後に論点自体は解決されたが貪食作用については本研究における重要度に対し費用と時間がかかりすぎてしまうことから,より条件に見合ったものに方針転換を行うこととした。以上のような計画の修正はあったものの,一部の候補遺伝子についてその関与を明らかにするための検討に着手しており,計画自体に遅れはない。
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Strategy for Future Research Activity |
目的自体に変更はなく,リアルタイムPCRを中心に遺伝子レベルでの解析に重点を置く。DC-STAMPの制御を受けると予想される遺伝子,DC-STAMPを制御し得る遺伝子を候補としている。細胞レベルでの応答を明らかにする重要性が増したため,並行して細胞の多核化・融合を直接評価する検討を行う。遺伝子レベルで候補を絞り込み,それらが実際に細胞レベルで影響を与えていることを示すことで,EGCgによる細胞融合に関わる要因の特定を進め,本年度中の学会発表を目指す。
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Causes of Carryover |
差額が生じた主な理由の1つとして,当初の計画であった貪食作用の検討の代わりにコストを抑えられる実験に方針転換を行ったことが挙げられる。それを踏まえ次年度に差額の範囲内で,貪食作用以外で細胞レベルでの応答を調べるための別の追加実験を行うことを計画している。加えて,新型コロナウイルス感染症拡大による製造メーカーへの影響と流通への影響が大きく,普段の納期の遅れおよび年度内に購入予定だった製品が間に合わずに科研費での手続きができないトラブルが生じた。引き続き必要な物品の手配を進めているため内容自体に大きな変更は生じない。以上の理由で合算・使用することを計画している。
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