2022 Fiscal Year Research-status Report
カロテノイド異性化反応の能動的制御技術の開発と加工への応用
Project/Area Number |
21K14823
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
本田 真己 名城大学, 理工学部, 准教授 (60824191)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | シス-トランス異性化 / カロテノイド / リコピン / アスタキサンチン / 反応制御 / 非加熱処理 / 光異性化 / 固体触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
カロテノイドはシス-トランス異性体間で体内吸収性や生理活性に加え、物理化学的性質(溶解度、結晶性、色価など)が大きく異なる。よって、用途や加工の種類に応じて適切な異性体を選択し、使用する必要がある。本研究は、カロテノイドの異性体比率を任意に制御できる技術を開発し、その技術を様々なカロテノイド加工に活用することで、加工の効率化や素材の高付加価値化を図ることを目的とする。本年度は、昨年度に引き続き非加熱処理(光照射、触媒添加)によるカロテノイド異性化制御技術の開発を行った。光照射による異性化については、LED照射装置を用い、波長の違いがアスタキサンチンのシス-トランス異性化反応に及ぼす影響を調査した。その結果、紫外線領域のLED照射が最も効率的に異性化反応(シス型からトランス型への異性化)を促進することを明らかにした。また、アスタキサンチンを溶解する溶媒の種類により異性化や分解の効率が大きく異なることを明らかにした。特に、アスタキサンチンを酢酸エチルに溶解し、青色光領域のLED照射を行うと、瞬時にアスタキサンチンが分解されることを見出した。本発見は研究の目的からは逸れるものの、カロテノイドを取り扱う上で極めて重要な知見である。触媒については、昨年度開発した固体触媒(イソチオシアネート基結合型シリカゲル)の特性解明を行った。具体的には、溶媒や温度、圧力がカロテノイドの異性化反応に及ぼす影響を調査した。複数のカロテノイド種(リコピン、β-カロテン、ルテイン、アスタキサンチン、フコキサンチン)について調査を行ったが、いずれも温和な条件下で効率的に異性化反応(トランス型からシス型への異性化)が進行することを明らかにした。以上より、光照射と触媒添加を組み合わせることで、温和な条件下でカロテノイドの異性体比率を任意に制御できる可能性を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LED照射と新規に開発した固体触媒(イソチオシアネート基結合型シリカゲル)によるカロテノイドの異性化特性を解明したことに加え、それらの方法を組み合わせることで、カロテノイドのシス-トランス異性化反応を任意に制御できる可能性を示した。また、固体触媒については試薬メーカーと共同で開発し、販売(受託生産)可能な状態までブラッシュアップできた。LED照射によるカロテノイド異性化に関する成果は、学会発表(第34回 カロテノイド研究談話会)済み・論文投稿中(審査中)である。固体触媒によるカロテノイド異性化に関する成果は、論文(Food Chem. 410, 135388, 2023)掲載済みである。以上より、現在までの進捗状況として、当初の計画通りおおむね順調に進んでいると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和5年度は、これまでに開発した異性化技術を駆使して、カロテノイドの物性(結晶性、溶解度、色価など)を任意に制御できる技術を開発する。それを利用して、カロテノイド加工の効率改善や品質改善が可能か検証する。さらに、カロテノイド異性体の生理活性の評価を実施する。
|
Research Products
(11 results)