2021 Fiscal Year Research-status Report
オルニチンにより仲介される新規アミノ酸シグナル経路の同定
Project/Area Number |
21K14826
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西 宏起 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (90845653)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アミノ酸 / オルニチン / 栄養シグナル / 栄養センシング / 代謝制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
○培養肝細胞モデルを用いたオルニチン応答タンパク質の探索 オルニチンを共有結合させた磁気ビーズおよびオルニチンと構造の似たシトルリンを結合させたビーズを作製し、ラット肝がん由来H4IIE細胞の細胞破砕液と混合しビーズと共にプルダウンされたタンパク質の粗抽出液を質量分析に供し、含まれるタンパク質を網羅的に同定した。対照ビーズおよびシトルリン結合ビーズには結合せずオルニチン結合ビーズのみに特異的に結合するタンパク質を複数同定することに成功した。その中にはRNAスプライシングに関わるタンパク質が多く認められたため、アミノ酸欠乏培地およびそこにオルニチンを添加した培地で培養したH4IIE細胞を用いて多数の遺伝子の既知のスプライシングバリアント量を測定した。その結果複数の遺伝子について、対照培地と比較してアミノ酸欠乏培地で培養した場合に量が変化したバリアントがオルニチン添加によって対照と同程度に戻ることがわかった。 ○キイロショウジョウバエモデルを用いたオルニチン応答タンパク質の探索 野生型キイロショウジョウバエの3齢幼虫に、乾燥酵母含量の多い餌(100Y、高タンパク食)または少ない餌(5Y、低タンパク食)を与えたところ、5Y群の幼虫の肝細胞様細胞(エノサイト)に顕著な脂質蓄積が観察された。したがってショウジョウバエ幼虫でも哺乳類と同様のタンパク質栄養状態に応じた脂肪肝様表現型が認められることが示された。一方、RNAseq解析により5Y食給餌幼虫の遺伝子発現プロファイルを100Y食給餌幼虫のものと比較し、発現量が大きく変化する複数の遺伝子を同定した。それらの遺伝子について、さらに5Y食にアミノ酸やオルニチンを添加した餌を給餌した際の発現量を測定した結果、一部の遺伝子はアミノ酸やオルニチンの摂取に応じて発現量が100Y群レベルまで戻ることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
哺乳類培養細胞株H4IIEを用いたオルニチン応答性タンパク質の探索については、必要なオルニチン結合ビーズの作製に成功し、さらに質量分析計を用いた候補タンパク質の網羅的同定にも成功した。候補タンパク質のオントロジー解析を行ったところスプライシング制御との関与が示唆されたため、RNAseqを用いて既知のスプライシングバリアントの発現量比を網羅的に解析したところ、予想通り複数の遺伝子のスプライシングがオルニチンやアミノ酸に応答して変化することが明らかになった。その中には転写因子やインスリン様シグナル関連タンパク質の遺伝子も見出されている。現在、それらの遺伝子のスプライシングが変化することによりG6Pase遺伝子の転写活性が調節されるとの仮説のもとに、それらのスプライシングバリアントがG6Pase遺伝子の転写調節に与える影響の解析を進めている。 ショウジョウバエモデルを用いた実験系では、当初の研究計画では成虫を用いたアッセイ系の構築を進めていた。成虫では低タンパク食摂取により体内の脂質蓄積量が増加することが報告されており、実際に申請者の行った実験でも確認されていた。しかし種々の検討の結果成虫はハイスループットに安定した結果を得るにはやや不適当なことが判明したため、幼虫を使った実験系の検討に切り替えた。その後の検討から、幼虫でも低タンパク質食摂取に応答して脂質蓄積やいくつかの遺伝子の発現促進/抑制が誘導されることを見出した。それらの表現型はいずれも、低タンパク食給餌したラットでも同様に観察されることも確認した。したがって改めてこの幼虫の実験系を用いて、アミノ酸/オルニチンに応答するシグナル経路/代謝経路の解析を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに哺乳類培養細胞を用いてオルニチン応答性タンパク質の候補を同定することに成功している。今後はこれらのタンパク質の機能解析を進め、申請者らの着目しているG6Pase遺伝子の転写調節機構との関連を追究していく。また、本年度までで確立したショウジョウバエ幼虫を用いた実験系を今後さらに活用し、哺乳類細胞で得られたオルニチン結合タンパク質候補を含む様々な遺伝子について、低タンパク食に応じた脂質蓄積誘導や遺伝子発現制御との関連を解析していく。
|
Causes of Carryover |
本研究は進行中であり、当初計画に従い次年度も引き続き哺乳類培養細胞およびショウジョウバエを用いてアミノ酸/オルニチン応答性タンパク質の機能解析を進める。
|
Research Products
(2 results)
-
[Journal Article] Essential Amino Acid Intake Is Required for Sustaining Serum Insulin-like Growth Factor-I Levels but Is Not Necessarily Needed for Body Growth2022
Author(s)
Hiroki Nishi, Kaito Uchida, Maki Saito, Daisuke Yamanaka, Haruka Nagata, Hinako Tomoshige, Ichiro Miyata, Koichi Ito, Yuka Toyoshima, Shin-Ichiro Takahashi, Fumihiko Hakuno and Asako Takenaka
-
Journal Title
Cells
Volume: 11
Pages: 1523
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-