2023 Fiscal Year Research-status Report
脂溶性化合物シコニンの分泌・生産における脂質輸送タンパク質LTPの役割の解明
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21K14828
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
市野 琢爾 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (80796441)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ムラサキ / シコニン / LTP / 細胞外分泌 / 特化代謝産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ムラサキ科の多年生草本植物であるムラサキ (Lithospermum erythrorhizon) は生薬や染料として用いられてきた。ムラサキは、根から脂溶性の赤色色素シコニンを生産・分泌することで、病原菌等からの防御に役立てていると考えられている。ムラサキの細胞において、シコニンは小胞体で生合成された後、細胞外で顆粒状の形態として蓄積されるが、その分泌や蓄積の仕組みに関しては殆ど分かっていない。我々はシコニン生産時に顕著な誘導発現を示す2つの脂質輸送タンパク質 (Lipid Transfer Protein: LTP) LeLTP1とLeLTP2を見出した。本研究では、ムラサキ由来のこれら2つのLTPの局在解析と生化学的解析を行い、LTPタンパク質の分子機能を明らかにするとともに、ムラサキにおいてシコニン生産への関与の有無を検証する。また、LTPと相互作用するタンパク質やLTPに発現制御される遺伝子の探索を行う。これらの実験を通して、LTPがシコニン生産・分泌にどのように関与しているのかを明らかにする。 2023年度は、LeLTP1に対する抗体を作製し、条件検討の末にムラサキサンプルにおいて内在性のLeLTP1タンパク質を検出する系を確立するに至った。また、二分子蛍光補完法 (BiFC) によるタンパク質間相互作用の解析系を確立し、LeLTP1とシコニン生合成酵素が小胞体で相互作用することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画に従ってムラサキLTPの機能解析を進めた。LeLTP1タンパク質のムラサキにおける挙動を調べるため、LeLTP1に対するペプチド抗体を作製した。まず、抗体の可用性を確かめるため、LeLTP1と蛍光タンパク質Venusの融合タンパク質をベンサミアナタバコの本葉で一過的に発現させた。抽出した粗タンパク質を用いてウェスタンブロットを行った結果、40 kDa付近に弱いシグナルながらもバンドが検出された。ブロッキング溶液や抗体反応時間・濃度等の検討を行い、LeLTP1のシグナルがかなり強く検出される条件を確立した。次いで、確立した条件において、LeLTP1遺伝子が高発現しているシコニン生産時のムラサキ毛状根とムラサキ培養細胞をサンプルとして、ウェスタンブロットを行った。その結果、20 kDa以下の位置に強いシグナルでバンドが検出されたため、ムラサキ細胞における内在性のLeLTP1タンパク質を検出できたと考えた。 前年度までの共免疫沈降実験によって、LeLTP1は既知の生合成酵素の一つと相互作用をすることが示唆された。2023年度は本タンパク質間相互作用を別の実験系で裏付けるため、BiFCに取り組んだ。LeLTP1または生合成酵素とnYFPあるいはcYFPとの融合タンパク質を発現するベクターを構築し、上述の方法で植物細胞に一過的に発現させた。共焦点レーザー顕微鏡観察の結果、いずれの組み合わせにおいてもLeLTP1と生合成酵素を共発現させた場合に、YFP蛍光を検出することができた。さらにYFP蛍光は小胞体への分布パターンを示したため、LeLTP1と生合成酵素の相互作用は小胞体で行われていると結論付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従って、LeLTPの分子機能の解析とLeLTP遺伝子のムラサキにおけるシコニン生産への関与の解明を行う。分子機能解析の一つとして、変異導入したLeLTPを発現させ、各アミノ酸置換によるLeLTPの細胞内局在性や生合成酵素とのタンパク質間相互作用への影響を調べる。また、LeLTPの発現抑制毛状根を作製し、シコニン生産量を評価することによって、各LeLTPがシコニン生産やシコニン分泌に機能しているのかどうかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究代表者は、本年度5月に所属研究機関を異動した。それ故、本年度は異動後の所属研究機関での研究実施環境の整備に時間を費やしたため、本研究計画の進展に若干の遅れが生じた。当初の研究計画の通りに研究を実施するため、研究期間を1年間延長し、次年度使用額が発生している。
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