2021 Fiscal Year Research-status Report
RNAの転写後制御を介した葉原基分化の時間的調節機構の解明
Project/Area Number |
21K14833
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三村 真生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80790378)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イネ / 葉間期 / 葉原基 / RNA顆粒 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
葉間期(葉原基が分化する時間的間隔)の長さは葉の枚数に影響を与える重要な形質だがその分子制御メカニズムは不明な点が多い。イネの葉間期が短縮するpla2変異体の原因遺伝子はRNA結合タンパク質をコードしており、他の葉間期制御に関わる遺伝子や葉の発生に関わる遺伝子のmRNAの3’非翻訳配列に結合する可能性が判明した。そこで本研究では、PLA2がこれらRNAに対してどのような機能を持ち、葉原基分化のタイミングを決めているのか明らかにすることを目的として解析を進める。本年度は以下の実験を行った。 (1) PLA2の抗体を用いた蛍光抗体染色法により茎頂におけるPLA2の細胞内局在を調査した。PLA2タンパク質は茎頂分裂組織と若い葉原基基部で検出され、特に、茎頂分裂組織では葉原基分化予定領域の細胞の細胞質全体で強いシグナルが観察された。分化した葉原基の細胞では細胞質シグナルに加えて顆粒状の構造体も観察された。この構造は細胞質RNA顆粒の一種だと考えられ、転写後制御の場として機能することが推測される。 (2) pla2変異体のうちpla2-1アレルは1アミノ酸変異(プロリン→ロイシン)により葉間期に異常が生じるため、このアミノ酸はPLA2機能に重要な役割を持つと考えられる。そこで、この変異がRNA結合能や細胞内局在に影響を与えるか調査した。まず変異タンパク質の標的RNAとの結合性をゲルシフトアッセイで調べたところ、RNA結合能が著しく低下することが判明した。また、pla2-1変異体では変異タンパク質量が減少し、茎頂分裂組織における細胞質シグナルが消失した。一方、新しい葉原基分化予定領域の細胞では、顆粒状の構造体のみ観察された。以上のことから、このアミノ酸はPLA2のRNA結合能のみならず、タンパク質の安定性や細胞内局在性にも影響を与えることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者異動の都合もあり、今年度予定していた植物ホルモンとの関連性の解析や翻訳効率の解析についてはあまり進展しなかった。一方で、PLA2の細胞内局在の解析から組織によってPLA2が細胞内局在性を変化させる可能性があること、また、変異タンパク質の解析から、PLA2機能に重要なアミノ酸の役割について興味深い結果が得られたため、一定の進捗はあったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はPLA2が標的RNAの翻訳効率に対してどのような影響を与えるのか調査するとともに、標的RNAのPLA2結合配列に変異を導入した植物体の作成を行い、表現型やそのRNAから作られるタンパク質量への影響を調べる。また、葉原基分化には植物ホルモンのオーキシンが重要な役割を果たすため、オーキシンレポーターを用いて、茎頂分裂組織から葉原基が分化するまでのPLA2の細胞内局在の変化をオーキシンの挙動との関連性も踏まえて解析する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の異動もあり、当初計画していたribo-seq等を行う準備が整わなかったことと、外注の抗体作成がうまくいかなかったため再度試すことになり、支払いが次年度になった。今後次世代シーケンサーのライブラリ作成kitやシーケンスおよび抗体作成の外注費用、そして情報解析のための設備を現所属で整えるための費用として使用することを予定している。
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