2023 Fiscal Year Research-status Report
RNAの転写後制御を介した葉原基分化の時間的調節機構の解明
Project/Area Number |
21K14833
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三村 真生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80790378)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イネ / 葉間期 / 葉原基 / 発生・分化 / 翻訳調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネの葉原基分化の時間的制御を司る分子機構を明らかにするため、葉間期が短縮する変異体とその原因遺伝子がコードするタンパク質の機能解析を中心に研究を行なった。今年度は以下の結果が得られた。 (1)葉間期を制御するRNA結合タンパク質PLA2の機能解明のため、前年度に行なったプロテオーム解析の再現性を確認する反復実験を行った。2回の実験結果を比較したところ、イネや他の植物で葉間期への関与が知られる遺伝子のタンパク質2種類がpla2変異体で顕著に減少していることがわかった。また、いずれの結果でもPLA2の標的候補として挙げられていた遺伝子のタンパク質量は変異体で減少傾向にあったため、PLA2が翻訳促進に関わる可能性を示唆する再現性のある結果が得られた。 (2)前年度に作成したPLA2結合候補配列を含むDNA配列を欠損させたゲノム編集個体の表現型解析を行なった。pla2変異体背景で欠損させた個体では、変異体の葉間期および葉サイズの表現型をやや回復させることが判明した。さらに、生殖成長期でも、未熟ではあるが花芽形成を引き起こし、小さい穂を作る個体も現れた。PLA2結合配列を含まない部分のDNAが欠損した個体も同時に得られていたが、その個体では上記のような表現型が見れらなかったため、PLA2が結合する配列はPLA2が機能欠損している条件下で葉間期を短縮させる効果を持つことが推測された。 (3)前年度に遺伝子を同定した葉間期の短縮を亢進する突然変異体の表現型解析を行なった。茎頂付近の組織を観察したところ、変異体では茎頂分裂組織が肥大化していた。一方、葉原基は発生ステージによって異なり、初期のP1は大きくなるものの、P2以降の葉原基では厚みが薄くなる傾向が観察できた。他の変異体との比較によって、葉間期の異常の強さと関連する形態的な特徴を見出すための足がかりとなる結果だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プロテオーム解析の再現性が確認できたことや、ゲノム編集個体および新規突然変異体の表現型解析で興味深い結果が得られたため、一定の進捗はあったと考える。一方で、共免疫沈降を行うためにPLA2-GFPを導入した植物体の生育が悪く、収穫できた種子が少なかったため、PLA2が示す顆粒構造に関する解析や、実際にPLA2がどのようにして翻訳を調節するのかという問題への取組はあまり進展がなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
PLA2がどのように結合するRNAの翻訳を制御するのか明らかにするためにはPLA2の相互作用因子を同定することが必要だと考える。その実験に使用する予定であったPLA2-GFPの種子が少なかったため、今後は、作成したPLA2の抗体を用いた免疫沈降の実験系の確立を試みる。また、既知RNA顆粒因子にmCherryを繋げて発現させた形質転換体を用いて、PLA2およびmCherry抗体による二重蛍光抗体染色および共免疫沈降を行うことで、PLA2が形成する顆粒構造の性質について明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
PLA2の相互作用因子の同定に向けた共免疫沈降後の質量分析を外注する予定であったが、材料が十分に得られなかったため解析ができなかった。今後、PLA2の抗体を用いた共免疫沈降の実験系を確立し、相互作用因子の同定に向けた質量分析外注費用として使用する予定である。また、PLA2の標的候補遺伝子の中でプロテオーム解析で検出されなかったものの重要な遺伝子だと推測されるものもあるため、そのタンパク質量を調査するための抗体作成費用として使用することも検討している。
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