2021 Fiscal Year Research-status Report
オオムギの浅根性を制御する遺伝子群の同定と湿害耐性への効果の解明
Project/Area Number |
21K14837
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
中野 友貴 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中日本農業研究センター, 研究員 (40884979)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 根伸長角度 / 遺伝子多型 / 湿害 / オオムギ |
Outline of Annual Research Achievements |
オオムギは元来湿害に弱いが、日本国内では排水性の悪い水田転換畑でのオオムギ生産が一般的であるため、湿害耐性の高いオオムギ品種の育成が重要な課題となっている。近年の研究により根系構造が植物の土壌環境への適応に重要な役割を持つことが明らかとなってきており、湿害の回避には浅い根系が有効であることが示唆されている。そこで本研究では、オオムギの根系構造を制御する遺伝子群の同定を行い、それら遺伝子の湿害耐性への寄与を明らかにすることを目的とした。 イネで明らかになっている根伸長角度制御遺伝子OsDRO1とOsqSOR1のオオムギにおける相同遺伝子を探索したところ、60%以上の相同性を示す二つの遺伝子を同定した (HvDRO1、HvqSOR1)。この二つの遺伝子のオオムギ品種間での多型を確認したところ、HvDRO1にはフレームシフトを引き起こす変異が存在し、HvqSOR1にはアミノ酸置換を引き起こす変異が存在した。それらの変異はオオムギ品種間での根伸長角度の品種間差異と有意に関連していた。これらの結果から、同定したHvDRO1およびHvqSOR1がオオムギの根伸長角度の制御に関与していることが示唆された。また、国内オオムギ品種を用いた系統解析から、浅根型のHvDRO1遺伝子型は排水性の悪い重粘土壌での栽培が一般的な北陸・長野育成のオオムギ品種で主に保有されていることが明らかとなり、HvDRO1の遺伝子型が湿害環境への適応に貢献している可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
イネで同定された根伸長角度制御遺伝子OsDRO1とOsqSOR1のオオムギにおける相同遺伝子を探索し、その遺伝子多型がオオムギの根伸長角度の品種間差異と関連していることを明らかにした。また、国内オオムギのSNP情報を用いた系統解析により、浅根型のHvDRO1遺伝子型が排水性の悪い重粘土壌での栽培が一般的な北陸・長野育成のオオムギ品種で主に保有されていることを明らかにし、HvDRO1の遺伝子型が湿害環境への適応に貢献していることが示唆された。これらに関して2報の論文を発表している。また、低酸素条件による根伸長阻害の品種間差異や通気組織の形成についても解析を行っており、当初の計画を超えた研究の発展が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
温室および圃場において土耕栽培を行い、HvDRO1とHvqSOR1の遺伝子型の組み合わせと根系や湿害耐性との関連を解析する。さらに、湿害条件下における養分吸収との関連についても解析を行う予定である。 また、国内外のオオムギ品種に関して低酸素条件下における根伸長阻害の品種間差異を評価し、GWASやQTL解析により品種間差異の原因遺伝子の探索を行う。さらに、低酸素耐性が顕著に異なる品種を用いて低酸素条件下における根部の比較トランスクリプトーム解析を行い、GWASやQTL解析の結果と統合し低酸素耐性に関与する遺伝子群の探索を行う。
|
Causes of Carryover |
オオムギの根伸長角度を制御する遺伝子の同定にオオムギのゲノム情報やイネの遺伝子情報を活用することで経費が削減できたことに加え、遺伝子変異の同定がスムーズに行えたことで実験の経費が当初の計画より削減できた。 次年度に行うトランスクリプトーム解析や窒素安定同位体を用いたトレーサー実験の費用として使用する計画である。
|
Research Products
(2 results)