2022 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation for Water Stress Tolerance in Plants Using Gas Exchange as an Indicator and Construction of Irrigation Control System based on the Plant Water Status
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21K14840
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
冨永 淳 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (20788632)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 気候変動 / 節水農業 / スマート農業 / フェノミクス / 光合成 / 水分生理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物と大気の境界面である葉のガス交換特性に着目し、作物の水分状態に応じた自動潅水制御システムの構築を目指している。昨年度は、従来法では困難であった気孔を有する葉の「クチクラ層の水透過性」や「気孔の漏れ」を非破壊で評価できる新たな測定法を開発した。 当該年度は、主に1)植物のガス交換やガス交換制御要因を測定する為の新たなガス交換測定方法を開発し、その検証をおこなった。さらに、2)開発した新規ガス交換測定法を用いて、水ストレスを検知できるか検証をおこなった。 上記1)では、標準測定装置LI-6800を用いた既存の測定法と新規測定法によって片面気孔性葉または両面気孔性葉の光合成や蒸散のCO2応答および光応答を同葉面積で同時に評価した。その結果、既存法と新規法による測定値はよく一致していた。また、両面気孔性葉の場合、向軸面と背軸面のどちらでも測定できた。 上記2)では、実験室内で自然光の日変化をシミュレートした条件で、作物に人為的な水ストレスを与えながら、光合成および蒸散を継続的に評価した。その結果、光合成と蒸散日変化の特異的なパターン変化から水ストレスを検知できた。 以上の結果から、新規ガス交換測定法の有用性を明らかにした。既存のガス交換測定法では植物にCO2や空気を供給する必要がある。その為、測定環境を安定させるために装置が複雑で大きくなる。新規ガス交換測定法では、ガス透過膜を介して植物-大気間をガス分子が直接移動するため、CO2や空気の供給を必要としない。また、装置の構成がシンプルなので、作物栽培現場での低コストで継続的なバイタルセンシングへの利用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、植物の水ストレスを直接感知して灌水を自動で制御できるシステムを構築することである。そこで本研究では、植物の環境刺激に応じてダイナミックに制御されているガス交換に着目し、1)植物の水ストレス状態および水ストレス耐性の指標を明らかにし、2)それら指標を作物栽培現場で簡便に計測、モニタリングする方法を開発することを目的としている。 1)について、本研究ではこれまでに、「クチクラ層の水透過性」や「気孔の漏れ」を非破壊で計測する新たな測定法を開発した。これらは、植物の水ストレス状態や水ストレス耐性の新たな指標となりえる。 2)については、前述の通り、当該年度に大きな進捗があった。従来のガス交換測定システムでは測定法がネックとなり、装置が大型かつ高価で、作物栽培現場でのアプリケーションに不向きであった。開発した新規ガス交換測定法によって、小型で安価な測定システムを実現できると考えられる。新規ガス交換測定法については、2023年1月に特許出願を完了した。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、植物の水ストレス検知に利用できる新たなガス交換測定法を開発した。今後は、本測定法の応用を目指しながら、おおむねこれまで通りの研究計画を進める。具体的には、1)開発した新規ガス交換測定法による測定システムの構築と2)本測定システムを用いた水ストレス応答および水ストレス耐性の評価方法の開発をおこなう。 1)では、新規ガス交換測定法を応用した測定システムの開発をおこなう。作物栽培現場でのアプリケーションに適した小型かつ安価な測定デバイスを開発し、光合成や蒸散の多点、長期モニタリングを可能にする。 開発した測定システムでモニタリングされる植物の生体情報を灌水制御へとフィードバックする為には、光合成や蒸散の日変化から植物の水ストレス応答を検知する必要がある。また、それらのモニタリングから植物の水ストレス耐性を評価できれば、スクリーニングへと応用できる可能性が拡がる。 そこで、2)では、上記の「クチクラ層の水透過性」や「気孔の漏れ」と水ストレス耐性との関係を、開発した測定システムによる光合成・蒸散モニタリングや、より直接的な既存の水分状態測定との比較等から明らかにする。
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Causes of Carryover |
初年度にコロナの影響により機器の選定と納期が遅れてしまい備品費を繰り越していたが、当該年度に購入することができた。一方で、移動を控えていたので旅費の使用がやや滞っており、次年度に繰り越している。繰り越し分は、海外を含めた学会発表の旅費として使用する予定である。
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