2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K14845
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
山崎 諒 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, 研究員 (30739660)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ダイズ / 青立ち / 老化 / 地球温暖化 / 気温 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、ダイズの一回結実性老化における低温誘導性(登熟期の気温低下を感知し、茎葉の老化を促進させる性質)について、ダイズ一般に広く認められる現象であるか、どの程度の品種・系統間差があるかを明らかにするために、ポット栽培試験を行った。農研機構作物研究部門の網室とガラス室(茨城県つくば市)において、ダイズコアコレクションのうち開花期・成熟期が近い43系統と標準的な9系統の計52系統を供試し、対照区と高温区の2処理・2反復とした。対照区・高温区ともに、播種~9月上旬(R5期付近)までは網室において外気温で栽培した。9月上旬以降は、対照区の個体は引き続き網室で栽培し、高温区の個体はボイラー付きのガラス室に移動し常時25℃以上を保った。 52系統のうち、36系統は対照区・高温区ともにすべての個体が収穫期に到達し、青立ち程度(収穫期における1節あたり残葉数)を比較できた。一方、残りの系統は、高温区において莢の成熟が極端に遅延し、対照区のすべての個体が収穫期に到達してから28日経過しても収穫期に到達しなかったため、一定期間で栽培を打ち切った。 収穫期に到達した36系統について、青立ち程度の処理間差と品種間差の統計解析を行った。その結果、高温区で青立ち程度が有意に高かったため、一回結実性老化の低温誘導性の一般性が示された。さらに、高温処理と品種の交互作用が認められたため、高温の青立ち促進効果に、品種・系統間差があることも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数のダイズ品種・系統に関して、登熟期以降の高温が青立ちに及ぼす影響を検証した結果、全体の傾向として高温がダイズの青立ちを促進し、さらに青立ちの促進効果に品種・系統間差があることを実験的に示すことができた。このため、本課題の当該年度の目標を計画通りに達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画の通り、2022年度は2021年度と同様のポット栽培試験を行い、一回結実性老化の低温誘導性とその品種・系統間差について、年次再現性を明らかにする。さらに、生育調査の結果も解析し、低温誘導性との関連を考察する。2023年度は、前年度までに供試した品種・系統のうち、生育ステージ進行が近く、高温による青立ち促進反応が異なる2品種・系統を選び出し、人工気象器において高温処理をかけ、トランスクリプトーム解析を行う。トランスクリプトームの品種・系統間差と処理間差を解析することで、低温誘導性の品種・系統間差が気温に対する遺伝子発現の反応で説明できるかどうかを検証する。
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Causes of Carryover |
当初計画では、ビニール温室を2棟立てたうえで1棟にボイラーを設置することで対照区と高温区を実現する予定だったが、異動先で、隣合った網室とガラス室を、ビニール温室の代わりに当該研究に利用できることが判明したため、ボイラーの設置と網室の雨除けのビニール張りだけで済み、必要費用が変わり、結果として次年度使用額が生じた。一方で、高温区における収穫期の遅延現象が予想以上に著しく発生したため、当初予想よりもボイラーによる加温栽培期間が長く必要になることおよび燃料費自体の高騰から、2022年度は当初計画よりも燃料費が多く必要になると予想されたため、次年度使用額を燃料費に充当する計画に変更した。
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