2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K14848
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西山 総一郎 京都大学, 農学研究科, 助教 (50827566)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 果樹 / プロアントシアニジン / 倍数性 / 果実品質 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、カキの最重要形質の一つである完全甘ガキ性の決定遺伝子座の解析と制御メカニズムの解明を目指した研究を実施している。これまでに、決定遺伝子の座乗領域はカキ属近縁種ゲノムベースで約900kbに絞り込まれている。しかしながら、栽培ガキの倍数性も一因となり、決定遺伝子とその制御メカニズムは同定できていない。2021年度は以下に示す3つの点について進展があった。 1) 完全甘ガキ性分離後代の果実を採取し、mRNAとsmall RNAの比較を行った。ここでは二倍体近縁種ゲノムをベースとした解析を行ったが、完全甘ガキ性決定領域において、発現変動やコード領域配列に差異のある候補遺伝子は得られなかった。倍数性栽培ガキを直接解析する必要性が改めて示された。 2) ナノポアMinIONを用い、adaptive sampling機能を用いて、非完全甘ガキである'太天'について完全甘ガキ性決定領域のターゲットシーケンスを行った。全領域をカバーする配列が得られ、二倍体種と大きな差異のある領域を特定できた。 3) 農研機構の協力により、潜性の完全甘ガキアレルに遺伝的に近いと思われる顕性の非完全甘ガキアレルを見出した。これらのアレルを有するF1後代の全ゲノムリシーケンスに基づく配列比較により、完全甘ガキ性決定遺伝子座乗領域を大きく絞り込むことができた。この領域において、有力な4つの候補遺伝子が得られた。ナノポアシーケンスを組み合わせて解析したところ、これらの候補遺伝子は二倍体種と六倍体栽培ガキでゲノム構造差異のある領域に座乗していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新たな材料とシーケンス技術が有効に作用し、ごく小数の候補遺伝子に絞り込むことができた。また、本年度までに取得した完全甘ガキ性分離後代のRNA-seqデータを活用することで、カキ果実における糖からプロアントシアニジンに至るまでの代謝制御に関する新たな仮説も得られている。これらのことから、研究が発展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
制御領域を絞り込むことができたものの、その領域では潜性/顕性アレル間で大きな構造差異が多数観察されている。当初は、決定変異を順遺伝学的に同定する計画であったが、ここまでの倍数体種における多様性データを見る限りこの方針には困難があると思われる。そこで、予定していた遺伝資源を用いた解析に加えて、候補遺伝子の機能検証により大きなエフォートを割いて研究を進める予定である。さらに、新たに得られた完全甘ガキ性に関する代謝制御機構の仮説検証も進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の見込みよりシーケンスにかかる費用を抑えることができたため、次年度使用額が生じた。次年度以降に新たな機能検証実験を予定しており、この費用に充てること計画している。
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