2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of flower color determinant gene-mediated disease resistance in plants
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21K14850
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
Dominguez John・Jewish 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 園芸資源研究部, 研究員 (60881555)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 花色 / 耐病性 / 糸状菌病 / リンドウ / 微生物叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は既知の病害防御機構から微生物叢までを多面的なアプローチで解析し、F3′ 5′ Hの未知の機能を解明することである。 まず、トランスクリプトーム解析によってF3′ 5′ H機能欠損で網羅的な遺伝子発現の変動を調べた。その結果 、F3′ 5′ H欠損株は細胞壁合成・修飾関連遺伝子の発現が低くなったことがわかった。実際、細胞壁の物理的特性の変化を葉の硬さで評価したところ、F3′ 5′ H欠損株の葉は野生型より柔らかいことが観察された。このことから、少なくともF3′ 5′ H機能欠損によって葉(細胞壁)の特性が変化したことを明らかにした。これは、これまで知られていないF3′ 5′ Hの葉における機能が存在することを支持する結果だと考えられる。しかし、この形質と耐病性の関係性については詳細に解析する必要がある。 次に、F3′ 5′ H欠損株の糸状菌病感受性の実態を把握する為に様々な解析を行った。その一つは感染時に病原体の増殖量の検定である。無傷接種でリンドウ黒斑病菌の増殖量を定量PCRで分析した結果、F3′ 5′ H欠損株で菌の増殖量は野生型の約4.5倍であることがわかった。興味深いことに、有傷接種で菌の増殖量と共に耐病性の差は認められなかった。また、菌の侵入を防ぐカーロスの沈着を観察したところ、野生型に比べてF3′ 5′ H欠損株はカロースの沈着率が低く、菌の侵入を妨げる防御機構は阻害されていることが示唆された。以上の結果から、菌侵入時の細胞壁周辺での攻防がF3′ 5′ Hの機能が影響する感染過程の一つだと考えられた。その他、防御遺伝子の発現および植物ホルモンの蓄積の解析を行ったが、現段階で有意差は検出されていない。 最後にF3′ 5′ Hは葉の微生物叢に影響を与える証拠は得られていないが、本研究で単離された菌の抗真菌活性、植物免疫活性といった特徴の評価は進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は大きく2つの課題で進めている。一つは、花色決定因子であるF3′ 5′ Hの耐病性への作用機序を明らかにすることである。もう一つは、F3′ 5′ H機能の微生物叢への影響を調べることである。 F3′ 5′ Hの耐病性への作用機序に関しては、上記で述べたように新規な情報が得られており、F3′ 5′ Hという遺伝子は花弁での花色決定に関する役割の他に、葉の物理特性や細胞壁周辺での植物防御応答といった様々な形質に影響を与える可能性が示唆された。これらは耐病性へのF3′ 5′ Hの未知の機能を理解する上で非常に重要な情報であると考えている。 F3′ 5′ H機能の微生物叢への影響に関しては、野生型に比べてF3′ 5′ H欠損株の抗真菌活性をもつCurtobacterium属菌の菌数が50-350倍低いという情報に基づいて、F3′ 5′ Hは宿主の微生物叢の形成に影響を与える仮説を立てた。リンドウの組織培養の培地に抗生物質(バンコマイシン)を処理するとCurtobacterium属菌の菌量が減り、耐病性が弱くなることを明らかにし、リンドウに共存するCurtobacterium属菌のリンドウ耐病性への重要性が示唆された。一方で、Curtobacterium属菌の菌数の変動は他の花色決定因子(DFR、F3H等)を含む、様々な形質転換体で観察され、F3′ 5′ H特異的作用を支持する結果を得るには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で述べた研究実績と研究状況を踏まえ、残りの研究期間を利用し、以下の推進方策を実施する。 トランスクリプトーム解析の結果に基づいて、細胞壁周辺の生化学的解析を行う。細胞壁合成・修飾の他、植物の酸化還元反応および脂肪代謝もF3′ 5′ H機能の欠損で影響を受けたことが示唆されたため、其々の過程に当てはまる評価試験を実施する。並行して、F3′ 5′ Hの作用機序をより詳細に理解できるように、タンパク質レベルの解析を行う。リンドウでの過剰発現、F3′ 5′ Hを持っていないシロイナズナやベンサミアナタバコでの一過的発現・過剰発現、細胞内局在、相互作用因子の同定といった解析により、F3′ 5′ Hタンパク質の葉での未知の機能の解明を行う。 微生物叢の解析については、植物共在微生物叢の改変に取り組み、微生物叢と宿主植物の耐病性の関係性を調べる。さらに、野外リンドウ圃場から単離された菌株の特徴づけ、抗真菌活性VOCsの同定等を続けていく。
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Causes of Carryover |
予定していた微生物叢の次世代シーケンス解析を保留したので、物品費は所内の研究予算で対応できました。また、参加した学会はコロナ禍でオンライン開催になったので旅費は使いませんでした。次年度以降、物品費はタンパク質の解析に必要な材料の購入やNGS解析などで使用する予定です。また、令和5年に国際学会の参加は想定されているので、その時に旅費を大きく使用する見込みです。
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[Presentation] 青色花色決定因子F3′5′H によるリンドウの糸状菌耐性機構の解析2022
Author(s)
Dominguez, J.J.A., Tateda, C., Iwai, M., Abe, Y., Obara K., Nishihara, M., Abe, A., Matsuura, T., Hirayama, T., Fujisaki, K.
Organizer
令和4年度日本植物病理学会大会
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