2022 Fiscal Year Research-status Report
植物ウイルスによる媒介昆虫の宿主選好性操作メカニズムの解明
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21K14854
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
湊 菜未 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60843430)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | plant virus / insect vector |
Outline of Annual Research Achievements |
植物ウイルスの約65%は昆虫によって伝搬される。昆虫媒介性ウイルスは自身の感染拡大のため媒介昆虫の寄主選好性を巧みに操作することで伝搬効率を高めていることが知られているが、選好性操作にはたらくウイルス因子や忌避物質の関わりなどそのメカニズムについては不明な点が多い。本研究課題では、コムギ・オオムギなどのムギ類作物に感染して収量を激減させる虫媒性ウイルスBYDV-PAVおよびCYDV-RPSを対象にムギ類作物とモデル植物ミナトカモジグサを駆使して植物ウイルスによる昆虫の寄主選好性操作における分子メカニズムを明らかし、植物ウイルスが農業生産現場において与えるインパクトを病害・虫害の両面から解明することを目指す。 2022年度において報告者は、ミナトカモジグサおよびコムギを宿主植物種として二種の黄萎ウイルスBYDV-PAVおよびCYDV-RPSについて媒介昆虫であるアブラムシおよび非媒介昆虫であるアカヒゲホソミドリカスミカメの寄主選好性に与える影響を解析し、(i) BYDV-PAV単独感染時においてウイルスによる昆虫の寄主選択行動操作は寄主植物種に加えて昆虫種にも依存しており普遍的な現象ではないこと、(ii) 媒介昆虫のウイルス感染植物に対する寄主選択には定位のみならず定着段階が重要であること、 (iii) 媒介昆虫の揮発性化合物に対する感受性がウイルス保毒により変化することを明らかにした。さらにウイルス単独および共感染植物を用いた試験において (iv) 単独感染植物を寄主とした場合には媒介昆虫の個体成長に負の影響をもたらすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度においては二種の宿主植物種(ミナトカモジグサおよびパンコムギ)について本邦産YDVsの単独感染および共感染が媒介昆虫の寄主選択行動および個体成長におよぼす影響について比較し、ウイルスによる昆虫の寄主選好性操作の普遍性について植物・昆虫の両面から解析を進めることが出来た。またYDVsについてウイルス保毒による媒介昆虫アブラムシの揮発性化合物に対する感受性の変化が明らかとなり、感染植物から放出される揮発性有機化合物の組成についても解析を進めていることから、順調に進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度においてはウイルス感染に伴う植物由来揮発性有機化合物の組成変化について解析を進めるほか、ウイルスの媒介昆虫操作戦略が非媒介昆虫に与える影響について2022年度に実施した実験室環境の実験に加えて圃場レベルでも解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、2022年度に予定していた解析に使用する一部消耗品の納品に遅れが生じ研究計画の見直しを強いられたため。 遺伝子発現解析のための核酸抽出試薬・PCR関連試薬およびその他チップ・チューブ類を購入するために使用する。
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