2021 Fiscal Year Research-status Report
ボルネオ島熱帯雨林に生息する花果食性昆虫が示す資源利用の時空間的変動性
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21K14861
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
浅野 郁 信州大学, 全学教育機構, 助教(特定雇用) (60840577)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 種子食性昆虫 / 一斉開花 / マスティング / 生物多様性 / ゾウムシ / フタバガキ科 / 熱帯雨林 / 生物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジアの低地フタバガキ混交林では、数年に一度の不規則な間隔で、林冠を構成する高木樹種が群集規模で繁殖を同調させる現象が観察される。この“同調繁殖期”では、林内で観察される植物繁殖器官の種類や量が急増する。一方、“非同調繁殖期”では、中低木層を中心とする樹木種が低密度かつ少量で多様な花や果実をつける。植物の繁殖器官を餌として利用する昆虫(以下、花果食性昆虫)が、このダイナミックに量が変動する餌資源に対して、どのように適応しているのかは未だ明らかになっていない。そこで本研究では、昆虫の資源利用様式の“時空間的変動性”に着目し、①非同調繁殖期に出現する花果食性昆虫は同調繁殖期に出現する昆虫と類似しているか、②これらの昆虫は利用する植物種を時空間的に変化させることにより個体群を維持しているのではないか、という2つの問いの解明を進めている。 当該年度はCOVID-19の影響により野外調査の実施が困難だったため、2013年から2019年の間にマレーシア サラワク州のランビルヒルズ国立公園で採集した種子食性標本の整理と種同定作業の確立を日本国内にて進めた。予備実験の結果、保存されていた昆虫標本からDNAが採取できたことから、形態情報だけではなく遺伝子情報も合わせることにより、より正確性の高い種同定が行える目処がついた。また、調査地における過去の開花・結実フェノロジーデータの解析や、フェノロジー調査の際に使用するiPadアプリの作成などを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19による海外渡航制限および活動制限の影響や産休・育休取得により約8ヶ月間休職状態にあったことなどから、予定していた調査・解析が遅れている。しかし、すでに採集済みの昆虫標本の種同定作業、野外調査時の記録を蓄積するために使用するiPadアプリの開発など日本国内でできることは着実に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
過去に採集していた昆虫標本からDNAが抽出できたことから、当分は日本国内にてDNAバーコーディング法を用いた昆虫の種判別・種同定作業を進める。同時に、植物の繁殖フェノロジーデータをまとめて発表することを目指す。 また、本研究の調査地であるマレーシアはCOVID-19による入国制限を課していたが、段階的に規制が緩和されつつある。したがって、延期していた野外調査を今夏もしくは来春に実施する予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により国内および海外の移動が制限されており、予定していた出張を後ろ倒しせざるを得なかった。次年度に持ち越した予算は、22年度に実施予定の海外調査の旅費に使用する予定である。
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