2022 Fiscal Year Research-status Report
ボルネオ島熱帯雨林に生息する花果食性昆虫が示す資源利用の時空間的変動性
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21K14861
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
浅野 郁 信州大学, 全学教育機構, 助教(特定雇用) (60840577)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 種子食性昆虫 / マスティング / 一斉開花 / ゾウムシ / キクイムシ / どんぐり / 熱帯雨林 / 生物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジアの低地フタバガキ混交林では、数年に一度の不規則な間隔で、林冠を構成する高木樹種が群集規模で繁殖を同調させる現象が観察される。この“同調繁殖期”では、林内で観察される植物繁殖器官の種類や量が急増する。一方、“非同調繁殖期”では、中低木層を中心とする樹木種が低密度かつ少量で多様な花や果実をつける。植物の繁殖器官を餌として利用する昆虫(以下、花果食性昆虫)が、この大きく変動する餌資源に対して、どのように適応しているのかは未だ明らかになっていない。そこで本研究では、昆虫の資源利用様式の“時空間的変動性”に着目し、①非同調繁殖期に出現する花果食性昆虫は同調繁殖期に出現する昆虫と類似しているか、②これらの昆虫は利用する植物種を時空間的に変化させることにより個体群を維持しているのではないか、という2つの問いの解明を進めている。 2022年度は、昨年度に引き続き、形態情報とDNA情報をもとに過去に採集した花果食性昆虫の種同定を進めた。また、海外渡航の規制が緩和されたため、9月には約2年半ぶりにマレーシアの調査地を訪問することができた。次年度から本格的に野外調査を再開するために、研究施設や調査トレイルの整備、調査許可の更新などを進めた。 また、今後も当分は頻繁に海外調査を実施するのは難しい状況が続くことから、国内での野外調査も実施することにした。フタバガキ科の種子食性キクイムシの近縁種が日本国内のブナ科種子を寄主としていることから、上述した②の課題の解明を進めるために、西日本の温帯林にてブナ科果実の採集と種子食性昆虫の飼育を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き、COVID-19による海外渡航制限と育児により予定していた頻度で海外での野外調査が実施できていないため、当初の計画と比べると遅れている。しかし、今年度の後半には2年半ぶりに海外渡航が実現し、野外調査を再開することができた。合わせて、海外調査の遅れを取り戻すために、本研究課題に関連した国内での野外調査も追加で実施することにした。過去に採集していた種子食性昆虫の同定なども進めており、着実に研究は進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、過去に採集した昆虫標本の種同定を進める。また、3回以上の海外野外調査と国内での野外調査を実施し、新たな種子食性昆虫の採集と日本国内で採集した種子食性昆虫の飼育実験などを通して、各種子食性昆虫の示す食性幅を明らかにする。加えて、種子食性昆虫の群集動態と密接に関係している植物の開花・結実フェノロジー調査を実施し、データペーパーとして発表することを目指す。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により海外調査の回数が予定よりも減ったため、旅費に残余が生じた。次年度は海外調査を複数回予定しているため、海外調査の費用として使用する予定である。
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