2023 Fiscal Year Annual Research Report
社会性昆虫における王物質:シロアリの生殖カスト分化の制御化合物の特定と生態的特徴
Project/Area Number |
21K14864
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
宮国 泰史 琉球大学, 地域連携推進機構 地域共創企画室, 特命講師 (00869290)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会性昆虫 / 化学分析 / カースト分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,シロアリにおいてオスの生殖虫(ネオテニック)分化を制御する物質の特定を目指し,研究期間全体を通じて,ワーカーの糞に,ネオテニック分化を制御する特異的な化合物が含まれるという仮定のもと,ネオテニック分化の条件およびワーカーの糞の成分分析を進めてきた. 前年度に引き続き,ワーカーの糞の成分分析と候補物質の探索を行い,令和5年度およびこれまでに結果を総合して検討した結果,生殖虫分化を制御する物質の特定には至らなかったものの,候補成分の絞り込みに有用な化学的成分ピークについていくつかの候補を得ることに成功した.また,生殖虫の存在するワーカーの集団でも特異的な化学成分が複数存在する可能性や,コロニー間の糞の成分差などが示され,本種のネオテニック分化に従来想定されていたよりも多くの化学物質が影響する可能性が示されるなど,当初計画よりも多くの知見が得られた.加えて,令和5年度においては,所属機関内の協力研究者とともに糞の成分分析を進めた結果,ボタニカル素材の強度を増強する成分が多く含まれていることなどが明らかになり,新たな素材開発等へつながりうるなど,新たな展開の可能性が見られた. また,本研究課題のこれまでに知見において,性別にかかわらず,同所的に存在する他のワーカーの存在が与える促進効果などを見つかっていたが,今年度の調査ではあらたにCO2濃度条件に違いにおいて,高CO2条件下ではワーカーの生殖虫分化が低くなる傾向がみられるなど,本種の生殖虫分化の機構が従来想定されていたものよりも複雑な条件の影響を受ける可能性が示されており,シロアリの生殖虫分化など生態的・生理的な機構の理解について進展がみられた. これらの知見については,現在新たな理論モデルの構築を行い,査読付き論文として英文学術誌への投稿を予定し,準備を進めている.
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