2022 Fiscal Year Research-status Report
Spatiotemporal Satoyama management focused on anthophilous Coreptera associated with fungiculture
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21K14872
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
淺野 悟史 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (10747869)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 訪花性カミキリムシ / キノコ産業 / 森林利用 / 送粉ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
土地利用データと粗朶の樹種ごとに発生するカミキリムシ科昆虫のデータベース構築を継続している。科研費研究2年目に入り,伐採後2年経過した土地での調査も加わり,調査地が増加した。一方で発生しているカミキリムシ種数はピークアウトし,伐採跡地の発生地としての利用可能な期限は当初の予想よりもはるかに短いということもわかってきた。このことは,循環型の土地利用を維持しながら,送粉生態系というサービスを享受する計画を考えるユニットの大きさ考えるうえで大変重要であり,現在構築しているデータベースとそこから導かれる森林利用ユニットに示唆を与えるものである。 幼虫調査と同時に,これまでの訪花植物と訪花性昆虫のデータと,カミキリムシ科昆虫がホスト(幼虫期の食餌)として利用している樹種のデータを統合し,「発生源に着目した送粉ネットワーク」の構築を提案した。このアイデアに対し,対馬市から企画賞を受賞した。 今後さらにデータを増やし,発展させ,循環型の土地利用が生み出す生態系サービスとしての訪花性昆虫という視点からの解析を行っていきたい。 なお,カミキリムシ科昆虫のホストに関する論文を査読付き英文2本,和文1本,報告した。カミキリムシ科昆虫のホストはこれまで一律に扱われてきたが,本研究の成果を通じて,植物の種や属に限定的な狭食性のものと,属や科,ときには門をまたがって利用する広食性のグループがあり,後者は樹種を問わず寄生している菌類やその寄生による不朽の程度によって利用の可否が決まるのではないかということが示唆された。このことは,森林の伐採によって供給されるCWD(Coarse Woody Debris;落ち枝などの木材残渣)によって,カミキリムシ科昆虫の種類がどの程度限定されるかを予想することにつながる成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定どおりの幼虫-樹種の関係を調査しつつ,成虫ー顕花植物の関係を導き出し,それぞれをカミキリムシ科昆虫の種でつなぐことで,これまで明らかにされてこなかった,土地利用―カミキリムシー顕花植物という関係をクリアに描き出すことができ,人間活動がカミキリムシ科昆虫を媒介して,送粉生態系に影響することを示しつつある。 また,従来「カミキリムシの幼虫は樹木を食害し,その樹種の嗜好性には幅がある」と漠然と理解されていたものを,明らかな狭食性のものを除けば,多くが樹種そのものに依存しているのではなく,寄生している菌類やその結果としての不朽具合がキーになっており,カミキリムシ科昆虫はジェネラリスト集団であるという新たな認識へのシフトチェンジを提案しつつある。これらの研究成果は現在投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
計画にしたがって伐採から3年経過した林地での調査継続とデータ収集を続け,訪花性に関する調査や食性に関する解析を進め,公表できるものから随時論文として公表していく予定である。また,本研究を通じて得られた成果を「カミキリムシの環境学(仮)」として書籍の出版が可能となるよう準備を進めていきたいと考えている。 アウトリーチを目的として,2022年度からは地元の高校生への教育プログラムの一環として,原木シイタケづくりとその副産物としての訪花性カミキリムシの調査を開始した。2023年度は伐採残渣で発生するカミキリムシの実証的研究と訪花シーンや産卵シーンの観察を通じた教育・研究活動を実施していく。
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