2022 Fiscal Year Research-status Report
ツキノワグマによる集落周辺の利用形態の解明および軋轢リスク減策への提案
Project/Area Number |
21K14875
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
森 智基 名城大学, 農学部, 研究員 (40879897)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ツキノワグマ / 隠蔽度 / 開空度 / 集落 / 植生 / 軋轢 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ツキノワグマにとって好適な環境(豊富な餌や隠れ場がある環境)が集落内に増え、それらを利用するクマと人間の軋轢が多発している。集落やその近辺でクマがどのように人間を回避し行動しているか、あるいはしていないのかといった、集落での詳細な利用形態に関する知見は、ツキノワグマと人間の軋轢を緩和するうえで重要な情報である。 本研究では、夏季に集落を利用するツキノワグマの活動場所と休息場所の特徴、およびそれらを利用する時間帯を調べることで、クマの集落利用形態の詳細を明らかにすることを目的としている。当該年度は、昨年に引き続き集落近辺で活動するツキノワグマの休息場所と活動場所の特徴(隠蔽度・開空度、植生等)に関する調査を行った。集落近辺で活動しているツキノワグマは、昼夜を問わず比較的見通しが低い場所を選択していたが、とくに日中の休息場所で見通しが低かった。一方で、開空度の選択性は確認されなかった。これらの成果の一部は8月頃に国際誌に掲載される見込みである。さらに、集落周辺と山側で活動するクマの利用環境の比較も行った。その結果、山側で活動しているツキノワグマは立木や倒木、微地形等によって隠蔽度の低い地点を休息場として利用している一方で、集落で活動しているツキノワグマは集落内の段丘林や河畔林にあるマント群落やササなどの藪で休息していた。集落近辺でのツキノワグマの利用頻度を抑えるためには、こうしたマント群落やササ藪などの刈払いを行い、見通しを良くする必要性があると考えらえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題はおおむね順調に進展している。昨年度に引き続き、集落におけるツキノワグマの環境利用調査を行い、集落内の林地を利用するツキノワグマが時間的・空間的に人間や人間活動を避けていることを明らかにした。それらの成果の一部が国際誌に掲載されることが決定した。さらに、集落近辺で活動しているツキノワグマの利用環境を山側で活動するツキノワグマの利用環境を比較することで、クマが集落近辺の林地を利用する要因となる植生環境(マント群落・ササ藪等)を明らかにすることができた。現在、これらの成果も国際誌に投稿している最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、集落近辺と山側で活動しているツキノワグマの利用環境を調査する。本年度を含む計3年分のデータを用い、利用環境の特徴(農耕地、人為景観からの距離、林幅等)を地理情報システム(GIS)にて抽出する。それらのデータに加え、局所的な利用環境のデータ(隠蔽度や開空度)を含めたより統合的な解析を行い、集落近辺を利用するツキノワグマの局所生息地選択と、それらの情報をもとに、ツキノワグマの人間との軋轢を緩和するためのより実用的な方策を考案する。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも、初年度に装着したGPS首輪のバッテリー消費が少なく長く保ったため、購入時期を繰り下げた。また、投稿論文についての出版費の支払いは来年度に持ちこしとなった。次年度に繰り越す助成金については、繰り下げた分のGPS購入費と出版経費に使用する予定である。
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