2023 Fiscal Year Annual Research Report
スギ人工林の広葉樹林化に対する土壌線虫を利用した地下部生物多様性評価
Project/Area Number |
21K14876
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
北上 雄大 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (40882684)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生物指標 / スギ人工林 / 広葉樹林化 / 土壌線虫 / ネットワーク解析 / 土壌微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林の多面的機能を発揮するために、放棄されたスギ人工林を豊かな広葉樹林に誘導する試みがある。広葉樹林の多面的機能として生物多様性の保全が期待されるが、そのためには物質循環に寄与する地下部の生物群集をモニタリングする適切な生物指標が求められる。森林土壌において線虫は環境変化に鋭敏に応答し 様々な生態系における生物指標になることから、線虫は広葉樹林化後の地下部多様性の変化を適切にモニタリングできる生物指標になると考えた。したがって、 土壌線虫をスギ人工林の広葉樹林化後の地下部多様性の変化を評価する生物指標として確立することを目指す。令和3年度はスギ人工林と広葉樹林の線虫群集の特徴を把握した。形態観察の結果、両林分合わせて1259頭観察したところ47分類群に類別され、線虫群集は両林分で有意に異なり、C/N比のような土壌化学性によって有意に強く影響されることが明らかになった。令和4年度は室内ポット実験からスギ人工林と広葉樹林の土壌と樹種の入替が土壌線虫群集に与える影響を把握した。その結果、処理区ごとに線虫群集構造は有意に異なり、由来土壌と植栽樹種が強く影響した。令和5年度は土壌線虫とそれの食資源となる細菌・真菌類との関わりを明らかにするために、ネットワーク構造を調べた。その結果、広葉樹林のネットワーク構造はスギ人工林に比べて複雑になった。さらに,スギ人工林では子のう菌類が、広葉樹林では担子菌類が優占した。菌食性線虫に着目すると、スギ人工林ではDitylenchus属が広葉樹林ではAphelenchoidesとFilenchusが検出された。以上から樹種の入替による地上部の改変は地下部の生物群集に影響を与え、地上部環境の変化に鋭敏に応答することが考えられた。
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