2022 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子浸透に伴う分布域の拡大と植生形成に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
21K14878
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
須貝 杏子 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (20801848)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コナラ属 / 隠岐諸島 / 種間交雑 / ナラ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は、種間交雑によって親種元来の分布域より幅広い環境に進出する可能性がある。日本海島嶼地域の1つである隠岐諸島は、狭い島内で冷温帯林構成種と暖温帯林構成種が混生し、植物種の分布が垂直的に圧縮した特徴的な植生が形成されている。その中で、コナラ属の3種(ミズナラ・カシワ・コナラ)では、島内で頻繁に交雑が生じていると考えられる。そこで本研究では、隠岐諸島全域に広く分布するミズナラの空間遺伝構造をマイクロサテライトマーカーにより明らかにし、他種との交雑の頻度やそれによる種の分布域の拡大の関係を明らかにしようとしている。 諸島内でコナラ属が分布する地域を探索し、島前と島後合わせて6地点で形態計測用の葉と堅果、DNA解析用の葉を採取し、DNA解析と形態計測に着手した。 2023年度以降、DNA解析と形態計測用を継続する予定である。また、比較対象として、島根半島と大山でも追加のサンプリングを行う。マイクロサテライトマーカーを用いて、それらの交雑の頻度と交雑帯の空間遺伝構造を明らかにする。これにより、近縁種との交雑による遺伝子浸透が生じているのかを明らかにし、雑種形成がもたらす植物の進化や環境適応の仕組みの理解、ひいては生物多様性の進化維持機構の理解に繋げる。隠岐諸島・中国山地の比較により、隠岐諸島の特異的な植生の形成との関係を考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目である2022年度に野外調査を本格的に始めて、その後の形態計測・遺伝解析は着手したところであるため、研究全体の進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度までに採取したサンプルについて形態計測を行う。また、マイクロサテライトマーカーを用いて、それらの交雑の頻度と交雑帯の空間遺伝構造を明らかにする。追加で、隠岐諸島との比較のために、三瓶山と大山においても調査を行う予定である。これにより、近縁種との交雑による遺伝子浸透が生じているのかを明らかにし、雑種形成がもたらす植物の進化や環境適応の仕組みの理解、ひいては生物多様性の進化維持機構の理解に繋げる。隠岐諸島・中国山地の比較により、隠岐諸島の特異的な植生の形成との関係を考察する。
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Causes of Carryover |
遺伝解析が持ち越しになっているため、その費用を繰り越した。
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