2023 Fiscal Year Research-status Report
Seed dispersal by large-sized mammals in temperate and hemiboreal zones
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21K14879
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
綱本 良啓 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究主任 (00884355)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エゾシカ / ヒグマ / GPS追跡 / 北海道 / 消化管通過時間 / 種子散布距離 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度と同様の手法で、エゾシカの採餌試験を追加実施した。合計5回(2022年2回、2022年3回)の結果から、液果樹木の種子破壊率および消化管通過時間を推定した。その結果、健全種子の回収率は、植物やシカ個体により異なったが最大でも半分程度であった(ヤマブドウ1.5-55.0%、サルナシ0.8-29.4%、ハマナス0.0-6.8%)。消化管通過時間は、ヤマブドウ23-121時間、サルナシ23-145時間、ハマナス23-101時間であった。破壊されずに排出された種子は、現在発芽試験を実施中である。さらに、既存の野外個体のGPS追跡データを利用することで、種子散布距離の推定を行った。GPS追跡データは、北海道白糠丘陵で捕獲した16頭の9-12月に関するものを利用した。GPS追跡個体の行動パターンは、個体や季節により大きく異なることが確認された。そのため、個体ごとに定住期と越冬地への移動期にデータを分けて解析を行った。定住期の種子散布距離は、ヤマブドウで平均573 m、最大8,670 m、サルナシで平均614 m、最大9,834 mであった。一方で、越冬地への移動期の散布距離は顕著に長く、ヤマブドウで平均2,915 m、最大18,496 m、サルナシ平均3,770 m、最大18,341 mであった。以上より、エゾシカは、多くの種子を消化過程で破壊してしまうが、長距離散布者として貢献していると考えられた。これらの研究成果について、日本生態学会にて口頭発表を行った。 また、ヒグマの種子散布機能については、昨年度までに実施した採餌試験や発芽試験の成果を取りまとめ、論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エゾシカについては、昨年度に試行回数が不足していた採餌試験を追加実施することで、消化管通過時間、種子破壊率、散布距離などを推定することができた。ヒグマについては、昨年度までの研究成果を取りまとめ論文として公表した。以上のことより、エゾシカとヒグマの種子散布機能を評価するという本研究も目的は、おおむね達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
エゾシカ排泄種子の発芽試験を継続し、発芽率を推定する。エゾシカの種子散布機能についての研究成果についての論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
採餌試験及び発芽試験について、分析を担当する補助者の人材が不足しており、当初の予定より短期間しか雇用することができなかった。また、学会のオンライン開催により、旅費が不要になった。次年度に、補助者を雇用する人件費および論文作成にかかる費用(英文校正、論文投稿など)として執行する予定である。
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[Journal Article] Seed dispersal function of the brown bear Ursus arctos on Hokkaido Island in northern Japan: gut passage time, dispersal distance, germination, and effects of remaining pulp2024
Author(s)
Tsunamoto, Y., Tsuruga, H., Kobayashi, K., Sukegawa, T., and Asakura, T.
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Journal Title
Oecologia
Volume: 204
Pages: 505-515
DOI
Peer Reviewed
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