2021 Fiscal Year Research-status Report
原発事故後10年目以降における森林土壌有機物による放射性セシウム保持機能の評価
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21K14884
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
眞中 卓也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (00784703)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 森林土壌 / 有機物 / 福島原発事故 / 分解過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年3月の福島原発事故により、福島の森林域に、放射性物質であるセシウム137(137Cs)が放出された。一般に、落葉層中の有機物による137Csの吸着は一時的なものであり、137Csはその下の鉱質土層へ短時間で移行すると考えられている。一方で、事故から10年近くが経過した現在でも、一部の137Csが化学的可給度(移動しやすさ)の低い形態で、落葉層中に残存しているという報告がある。そこで申請者は、福島の森林域において、「有機物試料を種類別に採取」×「リターバッグ試験などによる分解過程の模擬」×「複数の抽出剤による137Csの化学的可給度の詳細な評価」×「化学組成分析による137Cs保持に寄与する化学構造の推定」という実験・解析を行うことで、「落葉層中のどの有機物が」「どのような生物化学的な反応を通して」137Csを強固に保持するのかを解明する。 今年度は福島県内の森林(スギ・コナラ林)において、生葉・樹皮などの植物体の部位別採取を行った。またリタートラップによって新鮮落葉を採取した。これらの試料に対し、まずは純水・酢酸アンモニウム溶液抽出による137Csの化学的可給度の評価を行った。その結果、例えばスギの当年葉では、酢酸アンモニウム溶液を使っても全137Csの4割ほどしか回収することができず、植物の細胞構造などに強固に捕捉されている137Csの存在が示唆された。また部位による違いでは、特に外樹皮中の137Csが比較的動きにくいことが、樹種による違いでは、同じ部位ではスギよりコナラの137Csの方が全体的に動きやすいことが明らかになった。この結果は、森林の樹木や土壌の137Cs汚染や循環のメカニズムを知る上で、重要な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、植物体や落葉試料の採取などを実施することができた。また純水や酢酸アンモニウム溶液抽出による137Csの化学的可給度の評価を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれらの試料に対して、さらなる抽出実験や化学組成分析を行うほか、分解過程における137Csの化学的可給度の変化を調べるために、リターバッグ試験などにも取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で学会や調査の旅費が抑えられた。翌年度はさらなる実験のための備品購入や、論文執筆に係る経費(英文校閲・投稿料など)に使用する予定である。
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