2021 Fiscal Year Research-status Report
木材関連企業の環境および社会情報の開示動向と株主価値
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21K14887
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長坂 健司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (80780288)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ESG / 木材関連企業 / 株主価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
木材関連企業が公表している環境および社会情報の開示動向の全体像を把握するため、木材製品のサプライチェーンの各段階における木材利用に伴う貢献の可能性について、既往研究に基づき抽出した。 環境および社会情報の開示動向に関するテキスト分析を実施するためのデータセットを構築するため、製紙業、住宅メーカ、建材メーカ他の木材関連企業が公表している統合報告書等のレポーティングの現状を把握した。2021年12月末日時点で上場している木材関連企業79社のうち、製紙業8社、住宅メーカ6社、建材メーカ他7社の計21社が、2000年以降で少なくとも1回以上、環境および社会情報に関するレポートを発行していた。 木材関連企業のうち、環境情報の開示を以前から積極的に行っている製紙大手6社(王子ホールディングス、日本製紙、レンゴー、大王製紙、北越コーポレーション、三菱製紙)を対象に、環境情報の開示動向が、木材関連企業の自己資本収益率(ROE)等の株主価値に与える影響を検討した。結果、一部の企業に関しては、環境情報の積極的な開示が株主価値の向上に寄与する可能性があることを明らかにした。これらの企業は、対象期間中に企業合併や大幅な業績の悪化等、短期的に株主に大きな影響を与えるイベントが発生していない。従って、中長期的な視点で株主価値の向上を図る際に、環境情報の開示戦略は重要であると考えられる。また、上記の分析結果から、これら企業において人材への投資のあり方が株主価値に影響を与えている可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的(1)環境および社会情報の開示動向に関するマッピングについては、ほぼ計画通りに進捗した。 研究目的(2)環境および社会情報の開示動向に関するテキストマイニングについては、分析のためのデータセットを作成するための仕様書の作成が計画よりもやや遅れたことから、業者への発注が今期前半までずれ込む見込み。 研究目的(3)環境および社会情報の開示動向が株主価値に与える影響の測定については、ほぼ計画通りに進捗した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的(1)環境および社会情報の開示動向に関するマッピングについて、対象となる 木材関連企業が公表している環境および社会情報の動向を、ISOシリーズの取得状況等の 定量的な情報に基づき把握する。 研究目的(2)環境および社会情報の開示動向に関するテキストマイニングについて、分析のためのデータセットを完成させ、木材関連企業が公表している環境および社会情報の開示動向の全体像を把握する。 研究目的(3)環境および社会情報の開示動向が株主価値に与える影響の測定について、木材関連企業の環境および社会情報の開示動向が、木材関連企業の自己資本収益率(ROE)等の株主価値に与える影響を分析する。また、多くの環境および社会情報のうち、株主価値の変動を説明できる主な要因を抽出し、その因果関係を検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた、統合報告書等のPDFデータをテキストデータ化する作業の発注作業が次年度にずれ込んだため。
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