2021 Fiscal Year Research-status Report
Regulation of immune function by dulse (Palmaria palmata) and prevention of non-alcoholic fatty liver disease
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21K14912
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
趙 佳賢 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (80829052)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 紅藻ダルス / マクロファージ / 炎症 / 抗炎症 / クロロフィルa関連化合物 / フィコビリタンパク質由来ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
周りを海に囲まれた日本では, 多様な水産資源を食品や加工品として利用しているが, それでも利用されていない水産資源もまだ多く存在する。暖流と寒流の双方の影響を受ける日本沿岸の岩礁域には多様な海藻が生息しているため, その資源量は豊富であるが, 食用種はわずかであり, 代表的な未利用水産資源である。本研究で対象とした未利用紅藻,ダルス (Palmaria palmata)の資源量は,函館市臼尻近郊だけでも,年間数千トンに到達すると推定されている。しかし,コンブ養殖の種苗ロープに繁茂して日光を遮断するため,そのほとんどが除去・廃棄されている。先行研究では,凍結乾燥ダルスに含まれる複数種の抗炎症成分であるフィコビリタンパク質由来ペプチド (PP) とクロロフィルa関連化合物 (Chls)の有効性の可能性が示唆された。 2021年度には,海藻の代表的な加工処理法である熱風乾燥を用いて,ダルスを熱風乾燥により減容化した藻体から,三つの有効成分(糖画分とPP画分,Chls画分)の分画抽出する方法を検討した。さらに,ダルス由来の有効成分が生活習慣病の発症・増悪に深く関与しているマクロファージの免疫応答におよぼす影響を調べた。その結果,未利用水産資源である紅藻ダルスから抽出したPP画分とChls画分が抗炎症効果を持ち,また両画分の作用メカニズムが異なることを明らかにした。まず(1)PP画分は免疫細胞を活性化させ,炎症の早期収束に寄与することで炎症を抑制する。次に(2)Chls画分はLPS受容体をはじめとする異物認識機能を調節することで,炎症を抑制する。このような研究成果はダルス由来のPP画分とChls画分が炎症抑制の機能性食品素材としての利用可能性が高いことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に予定していた紅藻・ダルスの有効成分の抽出や,それらがマクロファージの機能に及ぼす影響やその作用メカニズムを調査した。糖画分について抽出方法は確立したが,その組成について検討する必要がある。しかし,現段階では組成分析へのさらなる検討が難しいため,まずは機能性やその作用機構が明らかになったPP画分とChls画分で実験を進めた。その結果PP画分とChls画分については,実験室レベルでの抽出法や,炎症抑制機能などが細胞レベルで確認できた。このようなことから,2022年度には,有効成分の可能性がある三つの成分の中,作用機構が確認できた二つを用いて2022年ど摂取実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の細胞実験において,ダルス由来のPP画分とChls画分が炎症抑制効果を持つことが確認された。このような結果から,生活習慣病の発症原因になる慢性炎症を抑制する食品素材として利用することが期待できる。2022年度には,これらの実用化には,有効成分の大量調製技術を確立する。大量調製した有効成分を用いて,2022年度の計画目標である動物摂取実験を行う。
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Causes of Carryover |
2022年度に実施する動物摂取実験を目指した大量調製技術において,大量な供試試料(紅藻,分解酵素)の材料経費が新たに必要となった。そのため,次年度使用額のほぼ全てを,この材料の購入に充てる。
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