2022 Fiscal Year Research-status Report
Regulation of immune function by dulse (Palmaria palmata) and prevention of non-alcoholic fatty liver disease
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21K14912
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
趙 佳賢 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (80829052)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 紅藻ダルス / 未利用水産資源 / マクロファージ / 自然免疫系 / 獲得免疫系 / クロロフィルa関連化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
未利用水産資源である紅藻ダルス (Palmaria palmata)の資源量は,函館市臼尻近郊だけでも,年間数千トンに到達すると推定されている。このようなダルスは,コンブ養殖の種苗ロープに繁茂して日光を遮断するため,そのほとんどが除去・廃棄されている。2022年度には,熱風乾燥処理したダルスから,有効成分であるフィコビリタンパク質由来ペプチド (PP) とクロロフィルa関連化合物 (Chls)を抽出し,免疫系全般に及ぼす影響を調べた。まず,2021年度の続きで,PP画分とChls画分の炎症抑制メカニズムについて,マウス初代マクロファージを用いて遺伝子レベルで検討を行った。また,ダルスの有効性について,自然免疫細胞であるマクロファージでの炎症抑制効果とともに,獲得免疫細胞による抗体産生への影響について調べた。 その結果,ダルスから抽出したPP画分,Chls画分が初代細胞においても,リポ多糖によるマクロファージの炎症反応を抑制すること,その作用メカニズムが各成分によって異なることが示された。特に,Chls画分については,低濃度においても,強い炎症性抑制が見られ,重要成分としてChls画分を中心に実験を進めた。さらに,Chlsによる光過敏症の懸念を払拭するため,ChlsのMgをCuに置換した(Cu-Chls)を調製し,その効果を調べた。その結果,両画分がマクロファージでの炎症反応を抑制し,そのメカニズムとしてはリポ多糖の受容体であるTLR4の遺伝子発現量を低下させることが示された。 また,マウスでChls画分の経口摂取により,スカシガイ・ヘモシアニンによるT細胞依存性抗体産生の増加傾向が見られた。さらにCu-Chls画分の経口摂取では,抗体産生の有意な増加が認められた。以上の結果は,ダルス由来のChls画分とCu-Chls画分の摂取が,マクロファージの炎症抑制とともに,獲得免疫系での抗体産生を増加させることを示し,両画分による免疫亢進効果を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は予定とおり,紅藻・ダルスのChls画分の大量抽出法,マクロファージでの作用メカニズム,獲得免疫系への影響を調査した。PP画分については,細胞実験で機能性は見られた一方,大量抽出法におけるさらなる検討が必要である。また,糖画分について,その組成を検討したが,追加分析が必要である。しかし,現段階では組成分析へのさらなる検討が難しい。そのため,2022年度は,動物摂取量が確保でき,その作用機構が明らかになったChls画分を中心に実験を進めた。特に,Chls画分については,使用酵素の検討により大量抽出法を確立し,光過敏症の改善法としてCu-Chls画分を追加し,自然免疫系と獲得免疫系に及ぼす影響を調べることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の動物摂取実験において,ダルス由来のChls画分が,マクロファージでの炎症反応の抑制とともに,獲得免疫細胞の抗体産生にも影響を与える可能性が見られた。このような結果は,ダルス由来のChls画分の摂取による免疫亢進効果が,非アルコール肝疾患や,それらの発症原因である慢性炎症を改善する可能性を示している。2023年度には,PP画分の大量抽出法を確立し,Chls画分とPP画分の摂取が,非アルコール肝疾患モデルでの症状改善効果を検討する。
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Causes of Carryover |
2023年度に実施する動物摂取実験を目指した大量調製技術において,大量な供試試料(紅藻,分解酵素)の材料経費が追加に必要となった。そのため,次年度使用額のほぼ全てを,この材料の購入に充てる。
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