2021 Fiscal Year Research-status Report
フナ類におけるクローン繁殖の分子基盤の解明からその応用まで
Project/Area Number |
21K14919
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
三品 達平 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (40830162)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | フナ / クローン繁殖 / 遺伝基盤 / 卵母細胞 / 受精卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、クローン繁殖の責任候補遺伝子が絞り込まれているコイ科フナ属魚類をモデルとして、減数分裂における染色体分配の制御機構および、受精後の核構造の制御機構の理解、その応用によるクローン繁殖動物の作出を目指すことである。初年度である2021年度は、主に(1)フナ類におけるクローン繁殖のメカニズム(2)進化ゲノム解析によって同定されたクローン繁殖の責任候補遺伝子(変異)による表現型の再現実験 を実施した。 (1)クローン繁殖の分子メカニズムを解明するために、親子間での遺伝子分析による組換えの検出、vitroでの卵成熟手法の確立とそれを応用した極体放出率、細胞周期の動態を調べた。これまでの分析から、クローン繁殖をするフナでは、組換えが欠如しており、第一減数分裂後に極体放出しないことが分かった。 (2)同定されたクローン繁殖の責任候補遺伝子(変異)による表現型の再現実験を実施するために、同じコイ科のゼブラフィッシュにおいて、第一減数分裂における極体放出率の定量方法を確立した。そして、同定されたクローン繁殖の責任候補遺伝子すべてのmRNAを顕微注入し、表現型が再現されるか検証したところ、フナのクローン繁殖と同様に極体放出が抑制され、非還元卵が生じる率が上昇した。現在、同様の表現型を誘導するのに必要な遺伝子の更なる絞り込みを進めている。 また、本研究課題の土台となる、クローン繁殖をするフナ類において稀な有性生殖が存在することを報告する論文を出版した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
魚類の卵母細胞・受精卵における実験は蓄積が乏しい。そのため、第一減数分裂における極体放出率の定量や顕微注入するmRNA量の最適化などが必要だった。2021年度は、まずこれら実験系を確立した。さらに、クローン繁殖の責任候補である7遺伝子のクローンフナ型アリルの顕微注入によって、想定していたクローン繁殖の形質である第一減数分裂における極体放出の抑制が再現された。この結果は、クローン繁殖の分子基盤を明らかにするという目的を掲げる本研究計画の根幹を為す成果と言え、更なる絞り込みによる責任遺伝子・変異の特定に到る可能性をもたらす。 また、本研究課題の土台となる、クローン繁殖をするフナ類において稀な有性生殖が存在することを報告する論文を出版した。さらに、受精卵における受精後の精子の動態や、老化と関連した卵母細胞および周辺の卵丘細胞におけるトランスクリプトームの特徴といった関連研究も出版することができた。 以上より,当初の計画以上に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、クローン繁殖の分子基盤の詳細を明らかにするために、以下の項目について実験をする (1)極体放出を抑制する過程における責任遺伝子の絞り込みを実施する。クローン繁殖をするフナ類では組換えが欠如していることが分かったので、組換えを喪失した変異ゼブラフィッシュを作成して同様の実験を行う。 (2)クローン繁殖のメカニズムとして、他に受精後に精子由来の核で前核形成が生じないことが知られる。どうようにして、責任候補遺伝子のmRNAを顕微注入して表現型が再現されるかを調べる。 (3)絞り込まれた遺伝子について、有性生殖型・クローン繁殖型間で局在の違いを調べる
|
Research Products
(4 results)