2023 Fiscal Year Annual Research Report
フナ類におけるクローン繁殖の分子基盤の解明からその応用まで
Project/Area Number |
21K14919
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三品 達平 九州大学, 農学研究院, 助教 (40830162)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | フナ / クローン繁殖 / 遺伝基盤 / 減数分裂 / 受精卵 / 前核形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、クローン繁殖の責任候補遺伝子が絞り込まれているコイ科フナ属魚類をモデルとして、減数分裂における染色体分配の制御機構および、受精後の核構造の制御機構の理解、その応用によるクローン繁殖動物の作出を目指すことである。これまで2年の間に、野生フナ集団を対象とした集団ゲノム解析から、クローン繁殖の責任候補遺伝子を得た。さらに、同じコイ科のモデル魚であるゼブラフィッシュを用いて同定した候補遺伝子を対象として人為操作実験したところ、フナのクローン繁殖の表現型を部分的に再現することに成功した。最終年度である2023年度は、論文化に向けた補完実験を中心に実施した。特に、フナ類におけるクローン繁殖のメカニズムのうち受精後に排除される雄核に着目し、(1)受精後に精子由来のゲノムが排除される率と、(2)受精後の雄核の動態を解析することでクローン繁殖の安定性を検証した。まず、クローン繁殖をするフナの雌と有性フナの雄の交配から得られた稚魚の遺伝子分析をしたところ、79から100%と高い割合で精子由来のゲノムが排除されており、遺伝的に貢献した場合には倍数性の増加(4倍体化)が見られた。また、クローン型および有性型フナの受精卵における前核形成割合を定量的に調べたところ有性型フナの場合では、すべての受精卵で雄核、雌核の双方で前核形成にともなう核の膨潤が見られたが、クローン型では、ほぼすべての受精卵で雄核のみ核の膨潤がみられず、凝集したままの状態だった。こうした雄核・雌核での異なる核構造制御が雄核排除の原因と考えられる。以上の結果より、フナ類のクローン繁殖における雄核の排除は、安定したメカニズムが確立されていると考えられた。 これら期間全体を通して得られた成果は、クローン繁殖の分子基盤とその進化機構について逆遺伝学的手法を用いて検証した、新規性・独自性の高い結果であるため、現在、論文化を進めている。
|