2022 Fiscal Year Annual Research Report
Redefinition of the reproductive stage in bivalve based on the oocyte maturation process
Project/Area Number |
21K14920
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
前田 雪 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 研究員 (10756521)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | タイラギ / 二枚貝類 / 卵成熟 / ロングリードシーケンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、二枚貝類の卵の成熟状態に着目して成熟段階の評価方法を再定義することを目的とした。大型二枚貝類タイラギを研究対象として人工受精を実施し、単離卵のレチノイン酸処理による卵核胞崩壊率、および媒精して得られた幼生の正常発生率を主な指標として、卵の成熟段階を「核成熟」と「細胞質成熟」に区別し、各成熟の完了前後における遺伝子およびタンパク質の網羅的発現解析を実施した。卵細胞の発現遺伝子をロングリードシーケンスにより解読してデータベースを作成したのち、それぞれの成熟完了前後の比較を行った結果、複数の遺伝子およびタンパク質が特定された。両者で共通の増減を示した分子として、核成熟完了前後では2つの分子が、細胞質成熟前後では9つの分子が、核成熟完了前と細胞質成熟完了後では8つの分子が見出された。これらの分子には機能未知のものも含まれていたが、細胞骨格を構成する分子、細胞周期を調節する分子、タンパク質分解に関与する分子、および脂質代謝関連分子が含まれていた。特に、核成熟完了前から細胞質成熟完了後にかけて増加する分子として、ミトコンドリア型アルデヒド脱水素酵素と26Sプロテアソームが特定された。前者は卵細胞の酸化ストレスに関与する分子であり、後者はユビキチン化されたタンパク質の分解酵素である。これらの分子のタンパク質量はD型幼生になると減少する傾向にあり、卵細胞に蓄積されたこれらの分子が幼生の発生に必要である可能性が示唆された。以上の結果から、本課題によりタイラギの卵の成熟段階を区別する指標となる分子が複数見出され、従来は生殖巣の切片観察のみで評価されていた成熟段階の評価方法に、新規の指標が導入できる可能性を示した。今後は本課題で特定された分子の成熟段階評価指標としての信頼性を確保するために、調査個体数を増やす必要がある。
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Research Products
(1 results)