2022 Fiscal Year Research-status Report
開発途上国・乾季野菜生産における灌漑の経済的価値に関する研究
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21K14928
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
毛利 泰大 酪農学園大学, 農食環境学群, 講師 (80880723)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | インドネシア / 野菜作 / 東ジャワ州 / 灌漑システム |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシアでは人口増加や経済成長によって食生活の多様化(畜産物・果樹・野菜の消費量の増加)が進行している。この変化はインドネシアの農家にとって所得向上や栄養状態改善への機会となる。 2年目の2022年度はインドネシア・東ジャワ州・ジャンバル市近郊の農村で水利組合、ならびに農家に対する聞き取り調査を実施した。事例村に灌漑水を供給する灌漑システムは、事例村より北へ10km弱に位置する。灌漑面積は約8500haである。関係村は19ヶ村、水利組合は各村におよそ1組合存在する。水利組合は基本的には村の下に設置されている。それゆえ水利組合の管理境界は村の境界に一致する。また水利組合の管理区域に重複重畳はない。 調査地域一帯では12月~4月までの雨季作、5月から8月までの第一乾季作、9月から11月までの第二乾季作の3区分の農作期がある。慣行的な作付体型は米ー米ー畑作物(当該地域ではトウモロコシ)だが、上流部では米を3期行う農家も存在する。また労働粗放的な畑作物から労働集約的な野菜作の導入が確認できた。調査村では乾季に野菜作の導入が進んでいる。作目は唐辛子、キャベツ、メロン、ナス、チンゲンサイ、ホウレンソウなどである。水資源が最も乏しい第二乾季作では河川からのポンプアップや井戸より灌漑水を調達することで野菜栽培を行う。第二乾季作に水を多く必要としないのはトウモロコシとタバコである。タバコは最も高い収益をもたらす一方不作のリスクが大きい。水利組合は区域内の末端水路に管理責任を有する。維持管理や配水は水管理人(ウルウル)によって行われ、農家の共同作業は存在しない。農家の水利用に影響を与える水管理人は地域の名誉職であり世襲的に継続される側面もある。維持管理や配水に不満を持つ農家は水利費の不払いによって水管理人を評価していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Covid-19のパンデミックの影響から初年度、および今年度当初は調査を実施することができず計画に遅れが生じていた。さらにパンデミックの影響により当初計画していた事例地(中部ジャワ州)での調査が困難となり、事例地の変更(東ジャワ州)を余儀なくされたが、そのような中で調査村の選定、調査協力者や調査員の確保といった調査体制を確立させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度より本研究の目的である乾季野菜作(調査村においては第二乾季作)における灌漑水の経済的価値の推定を行うための調査を実施する。 具体的には調査村より選定した農家に第二乾季作のファームレコードを依頼する。これにより、野菜作の生産額、経常投入財の投入額、労働投入額(家族労働、雇用労働)、資本投入がわかる。本研究の手法で示した灌漑水の経済的価値の推定には、これらに加え、地域一帯での価格に関する情報(地代、利子率、機械のレンタルレート)が必要となるため同時に調査する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究目的遂行のための計画において大部分を占める海外での調査が2022年度前半はCovid-19の影響を受け実施できなかったため。次年度は海外現地調査を実施する見込みである。
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