2021 Fiscal Year Research-status Report
Modeling of relationship between soil moisture and water stress and its application to farmland management
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21K14941
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
坂口 敦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (50747558)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 省力的水ストレス観測 / CWSI推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年は異常気象となり、梅雨は殆ど降雨が無くダイズに過湿ストレスを与える事ができず、また8月は殆どの日で降雨がみられ、ダイズに乾燥ストレスを与える事ができなかった。わずかにあった晴天日の観測値からは、CWSI-Eは水ストレス指数と大きく乖離し、またCWSIがとるべき0~1の範囲内の値を示さない時が多い一方で、CWSI-T式は0~1の範囲内の値は示すものの変化幅が小さく、水ストレス指数と同程度の変化幅を示さない傾向が見られた。2021年8月に得られたわずかな観測値からではCWSI推定式の優劣は判断できないものの、来年度に実施予定であった熱赤外線カメラ付きドローンによる葉温観測は成功し、梅雨明け以降のダイズ圃場の被覆率であれば熱画像内の畝間の地温を除外する作業をしなくてもCWSI推定値にほぼ影響はない事が分かった。また、CWSI-T式はCWSIの推定に地中熱フラックス(G)を要し、実用上は純放射量(Rn)に対する比で推定されるが、本ダイズ圃場の8月の晴天日の日中における実測G/Rnは平均6.2%(標準偏差0.023)であった。更に、気孔コンダクタンスから水ストレス指数を求める方法の省力化にも成功し(投稿中)、非水ストレス条件の圃場を設けなくても通常の栽培が行われている圃場での観測値のみから水ストレス指数をR2=0.85で推定できるようになった。これにより生産者のダイズ圃場における観測によって研究が実施可能となったため、圃場の用意と栽培管理作業が割愛できる事になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
異常気象によりダイズに過湿ストレスも乾燥ストレスも与える事ができず、水ストレスの観測方法を確立する事ができなかった。しかし、気孔コンダクタンスから省力的に水ストレスを把握する手法の開発に成功した事と、予定よりも1年早くドローンによるCWSIの推定を行えたため、異常気象さえ起きなければ迅速に水ストレスの観測方法を確立できる状態にはなった。そして、異常気象対策として、新たな観測圃場を確保できた。新たな観測圃場とは、西オーストラリア大学農学部長に紹介して頂いた、卒業生がオーストラリア北部で経営している灌漑圃場であり、当地では乾期に当たる4月から12月には降雨が少なく、特に7月から9月の間は降雨は全くないため、確実に乾燥ストレスを与える事が出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に達成できなかった水ストレスの観測方法を確立するため、乾燥ストレスについてはオーストラリア国西オーストラリア州カナナラのBothkamp farmに6月27日から7月31日まで滞在し、灌漑と灌漑後の乾燥期間の繰り返しに伴う土壌水分の乾湿の経時変化と、それに伴う気孔コンダクタンスおよび葉温の変化を観測し、CWSI推定式を確立する。また、ダイズで成功した根域土壌の吸引圧の変化と水ストレスの変化の関係の時刻別回帰式をトウモロコシに対しても作成する。過湿ストレスについては、ダイズの気孔コンダクタンスの経時変化が土壌の気相率変化に対しては大きなタイムラグを有するものの土壌の酸素濃度変化に対してはほぼタイムラグを有さない事を確認したため、チャンバー試験によりダイズの気孔コンダクタンス、土壌酸素濃度、気相率の経時変化を複数パターンの含水率変化条件下で観察して、Table Curve 3Dにより土壌の含水率の経時変化から水ストレスの経時変化を予測するための経験式を作成する。来年度以降のモデル予測工程は研究計画調書の通りに進める。
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Causes of Carryover |
2021年は異常気象で梅雨には雨が降らず、ダイズに灌漑が必要な8月にはほぼ連日雨が降り、計画通りに研究が進められなかった。そこで、2022年には絶対に乾燥ストレスが生じ得るオーストラリアの灌漑地区で乾燥ストレスと土壌水分の関係を観測し、またチャンバー試験により過湿ストレスと土壌水分の関係を観測する。その際の、旅費およびチャンバーによる試験装置の製作費に2021年度未使用金額を用いる。
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