2021 Fiscal Year Research-status Report
ビッグデータ解析によるハスモンヨトウの好適発生条件の解明と発生予測手法の開発
Project/Area Number |
21K14951
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
川北 哲史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 研究員 (80782606)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 時系列解析 / ハスモンヨトウ / 害虫発生予測 / ARIMAXモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
害虫の発生状況に応じた適期農薬散布が必要な害虫防除において、発生を駆動する気象条件の解明や予測は重要な課題である。本研究では、ダイズ等の露地作物における代表的飛来性害虫であるハスモンヨトウを対象とし、各地点の発生データと気象データを利用することで、「いつ・どのような気象要因や周辺地域の発生状況がハスモンヨトウの発生に寄与するのか」を明らかにすることを目的とした。 2021年度は主に①申請者が開発した害虫モニタリング装置を使って複数地点におけるハスモンヨトウの日単位の発生データの収集を行い、さらに②これまでに蓄積されたハスモンヨトウを対象としたフェロモントラップデータを利用し、ハスモンヨトウの発生数を目的変数とし、周辺地域の発生データや気象データを説明変数とした統計モデルの作成による、発生に寄与するパラメータの同定と評価を行った。 ①のデータ収集については新型コロナウイルス感染防止のため、広島県に限定して装置を県内各地に6月から9台設置し、11月までのハスモンヨトウの発生データを収集することができた。②の統計モデルの構築については、時系列解析において多くの利用実績があるARIMAXモデルを導入し、調査地点における過去8週間分の気象データ(気温・降水量・湿度・風速)からどのような要因が将来のハスモンヨトウの発生量に関係しているか分析した。その結果、特に発生30-40日前の気温条件が特に将来の発生量に有意に関係しており、気温が高くなると発生量が多くなる傾向があることが分かった。構築したモデルの予測性能を検証したところ、過去の発生データの平均値を利用したモデルと比べて良好な精度でハスモンヨトウの発生の増減を推定することができた。得られた成果の一部については、国際誌を通じて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
害虫モニタリング装置の開発については、装置を構成する部品の一部が一時入手困難になり、想定よりも開発可能台数が少なくなったものの、必要最低限の台数を開発することができた。また、現地における装置の設置についてもほぼ順調に進んでいる。また、既存データを活用した統計解析についても予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
害虫モニタリング装置の設置を今年度も引き続き行い、多様な環境下における日単位のハスモンヨトウの発生データ収集に努める。今後は本研究を通じて数年分蓄積したデータを活用して、ハスモンヨトウの発生データに関する各地点の記述的分析を進めるとともに、AI等を活用した新しい発生予測モデル等の開発に取り組む。
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Causes of Carryover |
害虫モニタリング装置の開発に必要な一部の部品の調達が年度内にできなくなり、その結果次年度使用額が生じることになった。また、新型コロナウイルスの蔓延防止のために予定した出張(学会発表含む)がなくなり、出張のために予定していた予算を使用することができなかった。今後、部品の調達が可能になり次第、新たな害虫モニタリング装置の開発に取り組むとともに、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえつつ、出張計画を立てる予定である。
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