2021 Fiscal Year Research-status Report
鶏肉品質を支配する要因の解明と品質の斉一性向上への取り組み
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21K14958
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
島元 紗希 新潟大学, 自然科学系, 助教 (90875395)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 品質評価 / 鶏肉 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品には品質の安定性が求められるが、畜産物の品質、美味しさ(食味性)のばらつきについての研究は十分ではない。本研究では、家畜の生産現場において生じる成長速度の差が、食肉品質のばらつきを生じさせる原因となり得るかを調べ、その作用機序の解明および食肉品質のばらつきの改善を試みる。 本年度は成長速度の異なる肉用鶏のむね肉における理化学特性(成分組成、色調、物理的特性、呈味成分)を調べた。肉用鶏ヒナを初期成長期(孵化後1-5日齢)の増体量により、成長の速い群(急速発育区)と遅い群(遅発育区)の2群に分けた。各区から無作為に6羽を選抜し、自由飲水、自由摂食下で飼育し、7週齢時にと鳥した。むね肉を採取し、重量を測定後、4℃で48時間熟成させた。むね肉中の水分、たんぱく質、脂質含量を測定した。加えて、色調、ドリップロス、クッキングロス、せん断力価、 および遊離アミノ酸含量を測定した。 1日齢の体重は急速発育区と遅発育区で差は認められなかった。一方、と鳥時の終体重は遅発育区と比較して急速発育区が有意に重くなった。また、むね肉重量も遅発育区と比較して急速発育区で有意に重くなった。成長速度が異なる肉用鶏のむね肉中の水分含量、たんぱく質および脂質含量に差は認められなかった。また、色調、ドリップロス、クッキングロスおよびせん断力価においても急速発育区と遅発育区との間で有意な差は認められなかった。一方、むね肉中の遊離アミノ酸含量は急速発育区と比較して、遅発育区でグルタミン酸が有意に高く、加えてチロシン、フェニルアラニンが高い傾向(P < 0.1)を示した。以上の結果より、肉用鶏における成長速度の差は、むね肉中の成分組成、色調および物理的特性に影響を与えないことが示唆された。一方で、成長速度の差は特にむね肉中のうま味を呈するグルタミン酸量に影響を与えたことから、呈味特性に影響を与える可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画通り、成長速度が異なる肉用鶏の肉質について基礎的な理化学分析を行うことができた。来年度以降は理化学分析に加えて、低分子代謝産物の網羅的解析、および食味性を詳細に調べるために官能評価試験等の実施をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は理化学分析に加えて、特に食味性を詳細に調べる。食味に関係する成分は、アミノ酸、ペプチド、糖、無機イオン、有機酸などがあるとされている。そこで、成長速度が異なる肉用鶏の骨格筋中の遊離アミノ酸濃度の測定と低分子代謝産物のメタボローム解析を行う。また、初期成長期の代謝状態とその後の鶏肉品質との関連性も明らかにする。さらに、官能評価試験等の実施をする予定である。加えて、初期成長期の成長速度の差と鶏肉品質のばらつきの最小化を検討する予定である。
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