2022 Fiscal Year Research-status Report
鶏肉品質を支配する要因の解明と品質の斉一性向上への取り組み
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21K14958
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
島元 紗希 新潟大学, 自然科学系, 助教 (90875395)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 初期成長 / 肉質 / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、家畜の生産現場において生じる成長速度の差が、食肉品質のばらつきを生じさせる原因となり得るかを調べ、その作用機序の解明および食肉品質のばらつきの改善を試みる。 昨年度の結果より、成長速度の差は特にむね肉中のうま味を呈するグルタミン酸量に影響を与えたことから、呈味特性に影響を与える可能性が示唆された。本年度は、成長速度の差が現れる5日齢ヒナの血漿、肝臓、浅胸筋のメタボローム解析を行い成長速度の要因となる代謝経路の同定を試みた。加えて、出荷日齢49日齢のむね肉のメタボローム解析を行い、初期成長期の代謝状態とその後の鶏肉品質との関連性も明らかにすることを試みた。 遅発育区は急速発育区と比較して、骨格筋タンパク質分解の指標である3-メチルヒスチジンの血中濃度が高く、タンパク質分解の亢進が示された。一方で、血中及び筋肉中の遊離必須アミノ酸量、特に分岐鎖アミノ酸量が遅発育区で低いことが明らかとなった。その他、成長速度の影響を受ける低分子代謝産物を抽出し、MetaboAnalyst 5.0によるエンリッチメント解析を行なった結果、アミノアシルtRNA生合成経路、Val・Leu・Ile分解経路、Arg・Pro代謝が影響を受けていることが示唆された。以上の結果より、初期成長期の成長速度の差には、タンパク質分解の高さが関与していること、またエネルギー利用の違いが影響していることが示された。 一方、出荷日齢の49日齢のむね肉のメタボローム解析を行った結果、初期成長期と同様に遅発育区において脂質代謝およびリン脂質代謝の亢進が示唆された。リン脂質の分解が促進するとドリップロスが増加する。昨年度の結果から、急速発育区と比較して遅発育区のドリップが増加傾向を示したことから、リン脂質代謝の影響が肉質品質に影響を及ぼす可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画通り、成長速度が異なるヒナとその後の出荷日齢時の代謝状況について低分子代謝産物のメタボローム解析により成長および肉質に与える代謝経路の関与を調べることができた。来年度以降は食味性を詳細に調べるために官能評価試験等の実施をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は特に食味性を詳細に調べる。初期成長期の代謝状態とその後の鶏肉品質との関連性がおいしさに与える影響を明らかにする。さらに、初期成長期の成長速度の差と鶏肉品質のばらつきの最小化を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度行うための味覚センサおよび官能評価分析の基準サンプルとして、市販鶏肉を用いてスープを調整する予定であったが、分析の直前に市販鶏肉購入することが適切であると判断し、次年度の予算として繰り越した。
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