2022 Fiscal Year Research-status Report
Enhancement of hen and chick mucosal barrier function focused on oviductal microbiota.
Project/Area Number |
21K14960
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
新居 隆浩 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (90804873)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニワトリ / プロバイオティクス / 卵管 / 粘膜バリア / ギ酸 / トリβディフェンシン / claudin |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は母鶏への有用細菌の経口投与によって母鶏卵管粘膜とヒナ腸管粘膜のバリア機能が強化されるか検証し、そのメカニズムを明らかにすることを目的としている。R3年度には産卵鶏への乳酸菌の経口投与は卵管粘膜の抗菌ペプチドのトリβディフェンシン(AvBD)10とタイト結合関連分子の claudin (CLA) 1の発現量を高めることで粘膜バリア機能を向上させる可能性を示した。R4年度は卵管粘膜におけるバリア機能増強のメカニズムを明らかにすることを目的とした。 まず初めに、R3年度の研究で得た卵管の細菌叢と粘膜バリア関連因子の遺伝子発現の結果の相関解析と卵管粘膜スワブサンプル中の短鎖脂肪酸分析をした。その結果、卵管のAvBDsの遺伝子発現と酪酸やギ酸といった短鎖脂肪酸の合成能を有するCoprococcus属との間に有意な正の相関が認められた。また、乳酸菌の経口投与によって卵管子宮部粘膜でギ酸の濃度が上昇する可能性が示唆された。 続いて、ギ酸や酪酸などの脂肪酸が卵管粘膜のバリア機能に作用するのかを卵管粘膜細胞を用いて調べた。約350日齢の白色レグホン産卵鶏から卵管膣部を採取し、初代卵管膣部上皮細胞をTCM-199培地中に播種した。播種の24時間後にギ酸、酢酸、酪酸、乳酸で刺激し、72時間後に培養細胞中のAvBDsとの遺伝子発現量を解析した。その結果、ギ酸および乳酸刺激でAvBD10が、酪酸および乳酸刺激でAvBD12の発現量がそれぞれ増加した。一方で、ギ酸、酪酸および乳酸刺激によりCLA-1やCLA-3の発現量が増加した。 以上のことから、産卵鶏への乳酸菌の経口投与は卵管の細菌叢を変化させ、卵管で増加したCoprococcus属菌が卵管粘膜のギ酸産生を増加させることで、これが卵管粘膜のAvBD10やCLA-1の発現を増加させ、卵管粘膜のバリア機能を強化する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R4年度には卵管粘膜の初代培養細胞を用いて、AvBDsやCLAsといった粘膜バリア機能にかかわる遺伝子の発現を制御する因子を明らかにすることを目的としていた。R3年度に得られた試験結果に関する相関解析を実施し、さらにR3年度に実施できなかった短鎖脂肪酸を対象としたメタボローム解析を行うことで、卵管粘膜バリア機能を制御しうる分子としてギ酸が候補に挙がった。この分子は試験計画当初に想定していなかったものである。その後のin vitroの試験において、ギ酸をはじめとした複数の短鎖脂肪酸の刺激によって卵管粘膜のAvBDsやCLAsの遺伝子発現が増強する可能性が示され、おおむね当初の予定通りに研究が進んだと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度までに乳酸菌の経口投与が卵管の粘膜バリア機能を増強する可能性とそのメカニズムの一端を明らかにすることに成功した。R5年度ではその発展として、母鶏への乳酸菌の投与によってヒナの細菌叢とバリア機能を強化させることを目的とした研究を計画している。乳酸菌を経口投与した産卵鶏に人工授精し、得られた鶏卵を孵卵してヒナを得る。この時受精率とふ化率を記録する。鶏卵の一部は卵内細菌叢解析に用いる。ヒナは、孵化直後と孵化1週間後に採材し、腸管内容物の菌叢解析と、腸の健常性を評価するために回腸および盲腸粘膜の腸粘膜の組織形態観察を行う。さらに、R3年度の研究で調べた項目と同様の粘膜バリア機能関連因子について解析する。また、母鶏の卵管内の細菌叢解析を合わせて行うことで、母鶏から卵内、そしてヒナへと細菌が移行する過程を追跡する。これらの結果から、母鶏への有用細菌投与がヒナ腸管粘膜のバリア機能を強化するか検証する。
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Research Products
(3 results)